双语阅读:【青春小说连载】春の夢(93)
小说《春之梦》发表于上世纪80年代,描写的是一位大学生的生活。父亲欠债而死,大学生哲之就流浪、打工,偿还所欠的债务。一只被钉到木柱子上的蜥蜴还活着,一直陪伴着他。还有他的爱情生活也激励着他生活。经过一年的奋斗,终于走出阴暗的生活。
七(14)
陽子は黙って頷き、タオルを裏返してから言った。
「まだ四十度も熱があるのよ」
「陽子と逢うたんは、きのうか、おとといか?」
「きのうよ。哲之、きのう寝たの何時?」
「十一時前かな。夜中にいっぺん目を醒ましたけど、それからずっと眠ってた」
陽子は指を折って計算し、
「二十時間も眠ってたのよ」
と言って微笑んだ。
「なんで俺のアパートに来たんや?」
「きのうホテルを出るとき、哲之、忘れ物をしたでしょう。デパートの包装紙に包まれた小さいな箱。私が持ってたの。別れるとき渡すのを忘れれてそのまま家に持って帰ってしもたから、これ何かなァって思ってあけてみたの。私、どんな悲鳴をあげたと思う?」
哲之は笑った。
「それで、きょうの夕方、哲之にこの気色の悪い物を渡すつもりでホテルへ行ったら、連絡もなしに休んでるって聞いて、ちょっと心配になったの。きょうから、ちゃんとアルバイトに戻るって言うてたでしょう?」
哲之は手を伸ばし、陽子の髪をまさぐった。
「家主さんに頼んで合鍵を貸してもらって中に入って、私、凄い悲鳴をあげたのよ。聞こえへんかった?」
哲之は陽子と一緒にキンを見た。柱に釘づけにされている蜥蜴を見て足が震え、しばらくとまらなかった。そのうえ哲之はいまにも死にそうな息遣いで横たわり、手を触れると高熱を発していたのだ。陽子はそう説明した。哲之が喉の乾きを訴えると、陽子は水をくんで来てくれた。
「起きれる?」
「うん。起きれそうや」
「すぐそこに病院があるわ。歩いて七、八ぶんのところ」
陽子に執拗(しつよう)に促されて、哲之は年老いた医者がひとりいるだけの小さな病院に連れて行かれた。医者は感冒だといって注射をし、薬をくれた。そして、二、三日は絶対に安静にしているようにと付け足した。アパートの部屋に帰ると、陽子はパジャマに着換えるように言った。そういわれて初めて、哲之は服を着たまま眠り続けていたことに気づいたのだった。服を脱いでいる哲之に陽子は溜息混じりに言った。
「あんなに雨に濡れたからよ」
「ホテルの風呂でゆっくり温めたんやけどなァ……」
まったく食欲はなかったが、哲之は蒲団の上に正坐して、陽子の炊いてくれた粥をすすり、卵焼きを食べた。食べながら、自分も一昼夜何も口にしていないが、キンもまたそれ以上に餌を与えられていないのだと考えた。彼は跡切れに、なぜ自分の部屋の柱に一匹の蜥蜴が釘づけにされているのかを話して聞かせた。話を聞き終えた陽子は、しばらく何事か考え込んでいたが、やがて、
「哲之は、もうこんなところに住むのはやめて、どこか他に引越したら?」
と言った。自分の家の近くにこぎれいなアパートがあり、一部屋空いているとのことだった。
「陽子の家の近くやったら、敷金も部屋代も、ここの三倍か四倍取るやろ。俺にはまだそんな金はあれへん」
「お母さんと一緒やったら暮らせるでしょう?」
哲之はかぶりを振った。哲之の心には、いつまたあの取立て屋の仲間が訪れるかも知れないという不安があったのである。もう二度と、母を辛いめに逢わせたくなかった。以前のように、毎日毎日取り立て屋に脅されたら、こんどこそ母は気が変になってしまうに違いないと思った。哲之はそれを陽子に言おうとして口を開いたが、言葉は自分でも思いも寄らぬものになって飛び出した。
「もう俺のことはほっといてくれ。二度と逢わんようにしよう」彼は自分の言葉に驚いたが、手は勝手に働いて腕にはめたままのロレックスを外し、それを陽子の膝に乗せていた。
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