双语阅读:【青春小说连载】春の夢(97)
小说《春之梦》发表于上世纪80年代,描写的是一位大学生的生活。父亲欠债而死,大学生哲之就流浪、打工,偿还所欠的债务。一只被钉到木柱子上的蜥蜴还活着,一直陪伴着他。还有他的爱情生活也激励着他生活。经过一年的奋斗,终于走出阴暗的生活。
八(4)
陽子はやがてそれに近い会話をみつけ出し、その部分を夫妻に示した。夫妻は同時に同じ言葉を投げてきた。しかしすぐに、哲之も陽子もドイツ語判らない語が判らないことを思い出したらしく、陽子の手に持った独和辞典のページをくった。そして最初に「庭」と言う単語を示し、次に「静かな」と言う形容詞の活字を指で押さえた。
「静かな庭、か。日曜日の京都に静かな庭なんてあるかなァ。どこもかしこも観光客でごった返してるぞォ」
しばらく考え込んでいた陽子が、
「あっ、ある。凄く静かなきれいなお庭があるわ」
と言った。
「どこ?金を取って庭を観せるような寺は、きょうみたいな天気のええ日は満員やぞォ。おまけに紅葉の見頃ときてるからなァ」
「お寺と違うの。普通のお家よ。もう八十歳以上になるお婆さんがひとりで住んでるの」
それは修学院離宮の近くで、二年前、京都めぐりをした際、偶然傍を通り、あまりにも豪壮な、しかも上品な純和風の建物があったので中を覗き込んでいると、家人であるらしき老婆に招き入れられ、お薄と菓子を御馳走になったのだと陽子は説明した。礼状を出したあとも年賀状を送ったが、必ず返事をくれるのだとも言った。
河原町に着くと、陽子は公衆電話のポケットに入り、電話帳を調べていた。そしてダイアルを廻した。哲之とドイツ人夫妻は雑踏を避けて道の端に立ち、陽子が何か喋っているのを見つめていた。目が合うたびにドイツ人の老いた夫と妻は柔和な微笑を哲之に注いだ。哲之はそのたびに同じような笑みを返した。陽子は公衆電話のポケットから出ると走って来て、
「どうぞお越し下さいって」
と哲之に言った。
「迷惑そうやなかったか?」
「ドイツの方の口に合うようなもんはおへんけど、どうぞ遠慮なしにお越しやす。そない言うてはったわ」
哲之はタクシーを停め、夫妻に乗るように促した。
「お庭の中にも家があるのよ。源氏の君がお忍びで訪ねて来そうな小さな隠れ家って感じの素敵な家」
修学院離宮を過ぎて少し行くと四つ辻があった。陽子は運転手に右に曲がるよう行った。道は緩やかにのぼり、澄んだ水の流れる浅い川に沿っていた。人家らしきものは一軒もなく、栗やクヌギの樹林がつづいた。丈高い竹林の前で陽子はタクシーを停めさせた。
「ここ?どこに家があるの?」
「この竹林の中よ。竹林が塀の代わりをしてるの」
タクシーの料金を払うときも、夫人は財布を哲之に返した。哲之は念のために運転集に領収(りょうしゅう)書を書いてもらい、釣りと一緒に財布に入れ、夫人に返した。修学院までの道筋には、外国人の目を魅きそうな古い寺が幾つか見えたが、夫妻は別段それらに興味を示すこともなくひとことの口もきかず坐っていた。そんな夫妻の態度を幾分いぶかしく感じたが、陽子のあとについて、竹林の中に一本曲がりくねってつづいている小径を進んだ。木洩れ陽が幾何学模様の眩ゆい無数の線を織り成していて、夫妻はときおり立ち止って小声で話をしていた。夫妻が立ち止まるたびに、哲之も陽子も歩を停め、ふたりの歩き出すのを待った。瓦屋根の大きな門が開き、着物の上に茶羽織を着た老婆が出て来た。四角い小さな眼鏡をかけた痩身の老婆は足が弱っているのか杖をついていた。陽子が駆け寄って、
「ご無理をお願いしてすみません」
と言った。
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