您现在的位置:首页 > 双语阅读 > 小说与诗集 > 春之梦 > 正文

双语阅读:【青春小说连载】春の夢(106)

时间:2012-01-13 14:31:19  来源:可可日语  作者:dodofly

    小说《春之梦》发表于上世纪80年代,描写的是一位大学生的生活。父亲欠债而死,大学生哲之就流浪、打工,偿还所欠的债务。一只被钉到木柱子上的蜥蜴还活着,一直陪伴着他。还有他的爱情生活也激励着他生活。经过一年的奋斗,终于走出阴暗的生活。

八(13)

「疲れたなァ。なんか、何もかもいやになってきた」
「キンちゃんが呼んでるって言うたくせに」
秋の陽に照られた陽子の顔は、いつもよりずっと美しく見えた。陽子の持っている、この不思議なふくよかさは何だろう。そう思った途端、哲之は、陽子を幸福にさせてやる自身がなくなってきた。
「こんな昼日中に、ホテルから出て来るのを人に見られるのはいややろ?」
「そやけど、いまから哲之のアパートへ行く時間なんかあれへんもん……」
哲之は黙って足元の落葉に目を落としていると、
「キンちゃんが呼んでいる……」
陽子はそう囁いて、哲之の手を引っ張った。寺の壁に沿って道は自然に左に折れ、そのままホテルの入口に繋がっていた。道の向こうで、まだ中学生らしい男の子が数人、ローラースケートに興じていた。その中のひとりが、哲之と陽子を見て、
「おっ、入るぞ、入りよるぞ」
とはやしたてた。ふたりが中に入ると、卑猥な言葉の混じった喚声が聞こえた。男が出て来て、
「あいつら、客が出入りするたんびに、しょうもないこと言うて、はやしたてやがる」
と呟き、哲之と陽子を上がり口に待たせたまま表に出て行った。
「こらっ!あっちへ行きんかい」
「どこで遊ぼうと、俺らの勝手や」



男の走り出す足音と、逃げていく子供たちの、路面を滑るローラースケートの音に聞き入って、哲之と陽子は顔を見合わせた。陽子が微笑んだ。哲之も微笑み返した。
「お待たせしました」
男は帰って来るとそう言って、スリッパを二足並べ、それから、
「うちはねェ、昼間は六時まで、何時間いてはっても値段は一緒です。その代わり、三千円、四千円、五千円のコースがおます。さあ、なんぼの部屋にしまひょ」
とまるで市場の魚屋と交渉するみたいに、陽気な口ぶりで説明した。
「四千円の部屋やったら、風呂がついてまっせ」
「じゃあ、その部屋にします」
哲之が答えると、男は、
「四千円のお部屋に御案内」
と大声を張り上げた。それを合図に案内係が出て来るのかと思っていると、そうではなく、男は帳場から部屋の鍵を持って来て、自分でエレベーターのスウィッチを押した。部屋に入り、男は風呂場の鏡を叩き、壁を叩き掛かっている安物の複製画の額をずらして、
「ノゾキが出来るような仕組みにはなってまへんさかい、安心しておくれやす」
と言った。そして胸ポケットから目刺を出した。(聞多喜太郎)と印されてあった。哲之は目刺の文字に見入り、
「何てお読みするんですか?」
と訊いた。
「マタキタロウ」
「はっ?」
「また来たろうっちゅう名前でんがな」
「まさか本名とは違うんでしょう?」
「あたりまえやがな。そんな名前、ほんまにつけられたら、私、親を恨みまっせ」
男は部屋から出て行くとき、ふたりに人の好きさそうな笑みを向け、
「また来ておくれやす」
と言った。顔をしかめて目刺に視線を注ぎ続けている哲之の耳に、陽子の忍び笑いが聞こえてきた。陽子はベッドに仰向けになり、両手で口を覆って笑い続けた。哲之にも笑いがこみあげてきた。彼は陽子の体の上に倒れこみ、一緒にシャワーを浴びようと誘った。陽子は、依然として笑い続けながら、セットした髪のカールが取れてしまうからいやだと言った。濡らさないようにすればいいではないかと哲之は執拗に求めた。陽子は笑うのをやめ、自分の目から五センチと離れてはない哲之の目を長い間無言で見つめ、両腕を哲之の頭に巻きつけてきた。そして静かに言った。
「私、どうなるの?」

上一页 [1] [2] 下一页

相关阅读

文章总排行

本月文章排行

无觅相关文章插件,快速提升流量