双语阅读:【青春小说连载】春の夢(107)
小说《春之梦》发表于上世纪80年代,描写的是一位大学生的生活。父亲欠债而死,大学生哲之就流浪、打工,偿还所欠的债务。一只被钉到木柱子上的蜥蜴还活着,一直陪伴着他。还有他的爱情生活也激励着他生活。经过一年的奋斗,终于走出阴暗的生活。
八(14)
かすかな人声が頭上からとも隣室からとも廊下からとも判別できない奇妙な響き方で、哲之と陽子を寂しく包んだ。汗ばんでくるほどの暖房の熱が、かろうじてふたりの共通の不安を、言葉や表情に出るのを押しとどめてくれた。
「判れへん。一時間後のことも判らへんのに」
やっとそれだけ答えて、哲之は陽子の首の横に自分の額をあてがった。
「私、相手がどんな人であろうが、ええい、なるようになれっていう気持がないと、女は結婚でけへんのと違うかなァって思う……」
陽子は自分から唇を寄せた。そして離れ、
「哲之は強い?」
と訊いた。
「俺、弱い」
また陽子は唇を寄せた。それはころころとここちよく哲之の唇の上で転がった。
「哲之は長生き出来る?」
「早死(じ)にしそうな気がする」
「お金儲けは上手?」
「一番苦手や」
「浮気する?」
「するかもしれへん」
哲之がふざけて答えているのではないことを、陽子はちゃんと判っているようだった。陽子は起き上がり、
「暑い」
と言った。
「そらそうや。ここは裸になることやもん」
「マタキタロウ……」
そう呟いて、陽子は風呂場に入って行った。着ているものを脱いでいる姿が、すりガラス越しに映っている。やがてシャワーの音が聞こえた。哲之はベッドの上で全裸になり、陽子のいるところへ行った。顔をのけぞらせ、背を向けてシャワーを浴びている陽子の裸体をこころゆくまで眺めた。狭い風呂場の中は、たちまち湯気でかすみ、しぶきが哲之の顔や胸に当たって流れた。彼は両手を伸ばし、陽子の腰をつかんで自分の方に向かせた。陽子の体のあちこちの、こわばっている部分を撫でた。そうしてほぐしてやった。
「私、ほくろがあるの」
哲之に石鹸を塗りたくられながら、陽子はこんどは哲之の首に腕をからめてそういった。
「知ってるよ。お尻と、みぞおちのとこに、大きいのがある」
陽子はかぶりを振り、凄く恥ずかしいところにあるのだと言った。シャワーの湯は、ふたりの髪をもうぐしゃぐしゃにしていた。哲之と陽子はシャワーを浴びたまま、タオルの上に坐った。哲之は陽子の体のあらゆる部分に石鹸を塗り、掌で何度も洗った。哲之の掌がどこをまさぐろうとも、陽子は決して体をちぢこまらせたりしなかった。ただしがみついていた。哲之は陽子の腕から離れ、あぐらをかき、タオルに両手を突いて、陽子がどんなに美しい体をしているかを教えてやった。陽子は横坐りの格好をして同じように両手を突き、哲之の言葉を聞いていた。哲之は、その凄く恥ずかしいところにあるほくろを見せて欲しいと言った。そうするためには、陽子はたぶん生まれて初めてに違いないほどに体を開き、しかも思い切り体をのけぞらせなければならなかった。陽子は哲之の言うとおりにした。ほくろが見えた。湯気と伝い落ちる湯が、ほくろを見え隠れさせた。それで、哲之には、それがキンの目のように見えた。瞬(またた)いているキンの小さな目に見えた。彼は陽子の体を閉じ、抱き寄せ、
「俺は、ほんとは強いんや」
と言った。陽子は頷いた。
「俺は長生きするぞ」
「金儲けの才能もある」
「浮気はせえへん」
そのたびに陽子は頷いた。だが、体によっても、心によっても、愛撫されているのは、哲之の方だった。それはベッドに入ってからも同じだった。哲之は自分の知っている数少ない性の技巧を、心を込めて陽子に注いだが、されるままになって目を閉じている陽子に果てしなく限りなく愛撫されている自分を感じた。
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