双语阅读:【青春小说连载】春の夢(110)
小说《春之梦》发表于上世纪80年代,描写的是一位大学生的生活。父亲欠债而死,大学生哲之就流浪、打工,偿还所欠的债务。一只被钉到木柱子上的蜥蜴还活着,一直陪伴着他。还有他的爱情生活也激励着他生活。经过一年的奋斗,终于走出阴暗的生活。
八(17)
陽子は喫茶店の電話で、ホテル側の処置を沢村千代乃に報告した。戻って来た陽子は元気がなかった。
「どうしたん?」
「手紙やったら時間がかかるから、ミュンヘンに国際電話をかけたんですって」
「息子さん、迎えに来るんやろ?」
陽子は首を振った。
「ふたりの好きなようにさせてやってくれって。そう言うてがちゃんと電話を切ったんやて」
「勝手に死にやがれっちゅうことか?」
「沢村のお婆さまも、ちょっと意外やったみたい。私、どうしょう……。私が頼んで、ラングさんをあの家につれて行ったんやもん」
自分の年老いた両親が異国で服毒自殺を図り、しかも祖国へ帰る飛行機代がないというのに、平気でいられる息子がこの世にいるのだろうか。ラング氏は、息子と自分との確実の真の理由を隠しているのに違いにないと哲之は推測した。
「電話をかけたのが二時半ですって。西ドイツと日本との時間差は八時間やから、向こうは朝の六時半でしょう?そやのに、息子の喋り方は、相当酔っ払ってるみたいやった。ちょっと時間をあけて、もう一回電話をかけるつもりやって、お婆さまが言うてはった」
「なんぼ酔っ払ってても、そんな電話が日本からかかってきたら、酔いも何も醒めてしまうやろ」
それには答えず、カールの取れてしまった髪に手をそなえながら、
「私、……疲れた」
と陽子は聞こえるか聞こえないかの声で言った。
「家に帰って、ゆっくり休んだらええ。駅まで送るよ」
「哲之も帰るんでしょう?」
「俺、お袋のとこに行ってみる。電話で話をするだけで、もう長いこと逢うてないから。きょうは日曜日で、お袋の勤めてる店も休みなんや」
いったん改札口を通り過ぎて、ホームへ昇る階段のところまで行っておきながら、陽子は駆け戻って来た。陽子は自分も一緒に行くと言い張ってきかなかった。そういえば、母と陽子とは随分長い間顔をあわせていないな、と哲之は思った。御堂筋側からキタ新地の本通りへ入って行ったので、通りの西の端にある「結城」まではかなりの距離があった。キタ新地に密集するクラブや料理屋は日曜日はそのほとんどが店を閉めていて、ポリバケツに詰め込まれた汚れ物の臭気がなかったら、まるで廃墟の街を思わせるほどであった。ときおり、どこかの店先に、きちんと背広を着て上等のネクタイーを締めた若い男が所在なげに立っていた。彼らは一様に美貌の持ち主であったが、みなそのちょっとした仕草に退廃と放恣を閃かせた。「結城」の二階に明かりが灯っていた。哲之はいっとき、その明かりを見つめ、もうあしたからでも、母と一緒に暮らしたいと思った。どちらかが賢くさえなれば、嫁と姑は仲良く同居出来る筈なのに。彼はその自分の考えを陽子に言った。
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