双语阅读:【青春小说连载】春の夢(124)
提要:
哲之就像是看到了阳子走出宾馆向阪急电车检票口走路的孤零零身影。在那纸片上所写的那一行,心胸非常难受的充满爱情的那一句话浮现出来。
九(11)
支配人がフロントの連中にそう言っているのが聞こえた。相当強い力でネクタイを引っ張られたらしく、中岡の細い首に長いミミズ腫れが出来ていた。中岡は不機嫌な口調で哲之を呼んだ。
「さっき、女の子が君に逢いに来たでェ。あの最中やったから帰ってもろたけど、どっちにしても、仕事中にボーイがフロントで友だちと逢うのは困るでェ。よっほどの用事の場合は裏の通用口から事務所に来てもらうにしてんか」
「その子、水色のワンピースを着てましたか?」
「ワンピースかどうかは知らんけど、水色の服を着とったな」
中岡は首のミミズ腫れを撫でながら、警官が到着したので事務所入って行った。哲之には陽子の、しょんぼりとホテルを出て阪急電車の改札口へ歩いて行く姿が目に見えるような気がした。紙切れにしたためられたった一行の、胸苦しくほどに愛情に満ち溢れた言葉が浮かんだ。(お腹が空いてるの?)。彼は己の嫉妬心を打ち砕こうとした。陽子が言ったように、若い娘が、素敵な男性にちやほやされて心を働かさぬ方が不思議ではないか。それが悪いというのか。あの夏の空白の何週間かに、陽子が石浜に何度も抱かれたとしても、いったいそれが何だ。陽子は聖女ではない。水に流した筈の出来事を蒸し返して、陰湿な復讐(ふくしゅう)心に燃えているこの俺は、なんと小さくて卑屈な人間だろう。彼は時計を見た。さっきの騒ぎから四十分近くたっていた。陽子はいま頃、ちょうど家に着いたかもしれない。そう思うと、いてもたってもいられなくなった。哲之は小走りでホテルから出て公衆電話のボックスに入った。だが、三人の友人に電話をかけたときに使い果たして、一枚の硬貨も残っていなかった。彼は小さく折り畳んだ千円札を広げながら、煙草屋へ走った。走っている彼の胸に、こんどにも俺という人間を知ってくれているあの陽子が、それでもなお他の男に心を移したのだ、という思いが閃いた。俺は、もっと大きな哀しみに責めさいなまれながら、薄汚れた電車に乗り、蜥蜴の棲む寂しい部屋へ毎日毎日帰って行ったのだ。その思いは、ひろげた千円札をポケットにねじ込ませ、彼の踵を返させた。タクシーのクラクションがすさまじい響きを夜の街に轟かせた。よっぽど苛立っているらしく、クラクションの音は異様に長くつづいた。それは哲之には、一日の仕事の終わりを告げる、工場のサイレンみたいに聞こえた。
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