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双语阅读:【青春小说连载】春の夢(125)

时间:2012-02-08 15:47:53  来源:可可日语  作者:dodofly

提要:在与百合子见面的咖啡店旁边的那个书店里,哲之手里拿着几种杂志,翻页读着。下面和百合子看电影是必须的事情了,但感觉到这是一件很麻烦的事。假如真的看了一次,之后对百合子怎么办才好?真是难以决定。
 

九(12)

百合子と待ち合わせた喫茶店の隣にある本屋で、哲之は何種類もの雑誌を手に取り、ページをくった。百合子と、これから映画を観なければならないということが、ひどくわずらわしく感じられたし、一度そうしてしまったあとの、百合子への対処法をどうすればいいのか決めかねていたからである。
「ちょっと見るだけやったらええけど、あんたみたいに一冊全部立ち読みされたら、うちは商売になれへんのよ」
本屋の女主人は、哲之から少し離れた場所で漫画の本に読みふけっている高校生に言ったのだが、その言葉で、他の二、三人の大学生らしい青年も出て行った。哲之も、手にした雑誌を棚に戻し、本屋から出た。約束の時間にもう三十分以上遅れていた。仕方なく、哲之は喫茶店の扉を押した。百合子の横顔はすぐに見つかった。少しうつむきかげんの、その横顔は、哲之にはひどくよるべないものに映り、彼を動揺させた。けれども、彼をもっと動揺させたのは、哲之の顔を見上げた瞬間の百合子の、それだけはどうにもつくろいようのない歓びと安堵の表情であった。
「きょうは授業をサボらなあかんかったから、友だちに代返を頼む電話を駆けまわってたんや。それで遅れてしもた。ごめんな……」
「私、もう井領さん、けえへんのじゃて思うた」
哲之は百合子の口から、初めて郷里の訛りを聞いた。百合子もそれに気づいたらしく、口を押さえて赤らんだ。
「なんで?誘うのは俺やのに、けえへん筈がないやろ?」
運ばれて来たまま、まったく口をつけていない冷た珈琲にミルクを入れると、百合子はスプーンでかき混ぜた。
「砂糖は入れへんのん?」
「うん」
「太るから?」
「うん」
それから百合子は、自分はきょうは休みだが、井領さんはどうするのかと訊いた。
「俺はまだアルバイトやから、好きなとき休めるんや。あとで鶴田にちょこちょこっといやみを言われるけど」
すると百合子は、声をひそめ、鶴田がもうじき会社を辞めさせられるのだと教えてくれた。ホテルの地下には、舶來品専門の高級店が五軒あった。一年ほど前から、フランス製のバッグや、デンマーク製の銀製品が盗まれるようになった。勿論(もちろん)、店をあけているときでもショーウィンドウには鍵がかけられ、店が閉められる際には、ガラスの扉にロックも施(ほどこ)される。なのに、品物が消える。それも大量にではなく、日を置いてわずかずつ盗まれるので、店の者は、しばらく気づかなかった。ところが、仕入れ伝票と品物とを照合(しょうごう)すると、各店で、それぞれ七、八点の商品が売れてもいないのにショーウィンドウから失くなっていたのだった。一店だけなら、その店の使用人が疑われるところだった。だが五店全部が被害を受けているとなると、ホテルの従業員の中に犯人がいることは明白だった。外部の者なら、一度に大量に盗んで行く筈で、期間をあけて少しずつ盗んだりはしないという推論が成り立ったからである。それでホテル側は、社員の出勤薄と、品物の失くなった日と、照らし合わせてみた。品物の失くなった夜に夜勤だった者を列記していくと、鶴田の名が浮かび上がったと言うのである。それが判ったのは五日前で、鶴田の夜勤の日はきょうだった。
「きょうの晩、夜中に二時ぐらいから、ガードマンが、地下のあちこちに隠れてるのよ」
「そんなこと、誰から聞いたんや?」
百合子はしばらく口ごもってから、
「フロントの中岡さん」
と答えた。
「中岡さん、高校の先輩やねん」

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