双语阅读:【青春小说连载】春の夢(133)
提要:“咨询一下对法律清楚的人如何。我从父亲那里没有得到一点遗产。我有偿还父亲不非正常所借钱的义务吗?即便是亲生儿子也划不来。没有财产赠与,却有了借钱的赠与,还没听说过这样的事情。”
十(4)
「誰が法律に詳しい人に相談してみようかなァ。俺は親父から一銭の財産も貰てないんやでェ。そやのに、俺が借りたわけでもない金を払う義務があるんやろか。なんぼ親子でも、間尺に合わんと思うんやけどなァ。財産贈与(ぞうよ)だけ受けるなんて、そんなアホ名話はないよ」
冬休みが終わったら、法学部の教授に訊いてみようということになった。住道駅に着くと、陽子はすぐに公衆電話のボックスに入って行った。その間、哲之はスーパーマーケットで、陽子がメモ用紙に走り書きした食料品を買った。ステーキ用の肉を二枚、サラダオイル、バター、じゃがいも、キャベツ、玉葱(たまねぎ)、マヨネーズ、人参、珈琲豆とドルップ式の珈琲たて……。それらを全部買って清算所で金を払い終えるのに相当時間がかかったのに、陽子は公衆電話のボックスから出てこなかった。哲之は大きな紙包みをかかえ、電話ボックスの方に近づいて行った。陽子が出てきて立ち止り、
「沢村のお婆さま、きのう夜、死にはったんやて」
と虚ろな表情で呟いた。
「死んだ……!」
「今晩、お通夜をするそうよ」
ハンドバッグから現金書留の封筒を出し、ふたりは消印(けしいん)の日付けを見た。十二月三十日のスタンプが捺されてあった。
「きのうの夕方から急に苦しみだして、救急車(きゅうきゅうしゃ)で病院に運んだんやけど、十時頃、息を引き取ったんやて」
ふたりは長い間、陽光の満ち溢れた、だが寒風の吹くまくる駅前の路上に立ち尽くしていた。どちらからともなく歩き出し、商店街を抜け、踏切りを渡った。
「もう相当な歳やったもんなァ」
と哲之は言った。言ってから、彼は、沢村千代乃が、あの広い庭の中に建てられた茶室の中で死んだのではないことに、あるこだわりを持った。沢村千代乃が、あの茶室で死を迎えたかったことは、彼女の口振りから察しがついていたし、おそらくその希望は叶えられるであろうと予感していたからである。――茶は、生死を覗き見る儀式だと思ってるの――。哲之は、沢村千代乃が問わず語りに話しつづけた言葉をなぜか妙にはっきりと覚えていた。――茶室にいるときは、亭主も客も死。茶室から出たら生――。――私は茶室でお昼寝をするんです。そうするとますます良く判ってくるんです。眠っている私は死。目醒めたら生。どちらも同じ私。生死、生死、生死――。
アパートの部屋に入り、鍵をかけると、哲之と陽子は抱き合って、いつまでも唇を重ねていた。
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