双语阅读:【青春小说连载】春の夢(182)
小说《春之梦》发表于上世纪80年代,描写的是一位大学生的生活。父亲欠债而死,大学生哲之就流浪、打工,偿还所欠的债务。一只被钉到木柱子上的蜥蜴还活着,一直陪伴着他。还有他的爱情生活也激励着他生活。经过一年的奋斗,终于走出阴暗的生活。
十二(9)
「まだ、ここだけちょっと腫れてるみたい」
哲之は、ラング氏の手紙を黙って陽子に渡した。
「いつ届いたの?」
「きょう」
湯冷めをしてはいけないから、どこか喫茶店に入ろうと誘ったが、陽子は、裏毛皮のコートを着て来たから大丈夫だと言って、隣のブランコに坐った。水銀灯(すいぎんとう)の明かりの下で、陽子はラング氏の手紙を読んだ。
「沢村千代乃の勘は外れたな。あの人、茶室で、こう言うたんや。おふたかたは、ここでは死ねなかったけど、きっとどこかで目的を遂げるでしょう。お別れのお茶ね……」
陽子はそれには答えず、
「髪を洗わなくてよかった。なんとなく、ふらっと哲之が来そうな気がしたの」
そうかぼそい声で言ってから、
「夢みたい……」
と呟いた。陽子の手から手紙を取り、
「夢ではなかったと気づかせてくれますって、ラングさんは書いてる」
哲之は突然、幽妙な気持が湧いて来たのを自覚しつつ言った。決して夢ではなかったが、夢のようであった……。彼は、自分の巣が、ひとときにせよ、電車を乗り継ぎ、うら寂しいなか道を三十分も歩いた先の、鉄の階段を昇った息苦しい箱みたいな場所にあったことさえ、信じがたかった。自分と陽子とのあいだに起こった出来事も、およそ想像のつく母の生活も、取り立て屋に怯えた日々も、まだまだつづくであろうデブ派とノッポ派の権力闘争も、磯貝がまもなく迎える大手術も、キンという一匹の蜥蜴の体内におさまってしまう。彼は自分の曲がった鼻を人差し指でさわりながら、そんな感懐を抱いたのである。
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