双语阅读:《福尔摩斯之跳舞的人》第4回
そしてこの後二三日の間、彼はたびたび手帳から、例の記号の画かれてある紙片を取り出しては、長いこと熱心に見つめているのであった。その後二週間ばかりの間、彼はそのことを、(おくび)にも出さなかったが、ふとある日の午後、私が外出しようとしているところを呼び止めた。
「ワトソン君、出ないでいる方がよかろうと思われるんだがね」
「なぜ?」
「今朝ヒルトン?キューピットから電報が来たのだ。そらあの舞踏人形のヒルトン?キューピットを知っているだろう。彼は一時二十分にリバプール街に着くと云っているのだ。で、もうやがてここに見えるだろうと思うのさ。その電報を綜合すると、どうも何か重大な新らしい出来事があったように思われるのだ」
やがてまもなく、二輪馬車が全速力で、停車場から我等のノーフォークの紳士を乗せて、来たのであった。大変悩み衰えているらしく、目は疲れており、額には皺を寄せていた。
「これには全く、すっかり弱らされてしまいました、ホームズさん、――」
彼は半病人のように、腕椅子にもたれ寄りながら云った。
「どうでしょう、――自分の周囲に未知の未見の人間が、何か策動していて、しかもその上に妻がもう一寸刻みに、殺されてゆくと考えては、とても我慢が出来ませんでしょう? いやこれこそ全く生きた気持はありませんよ。いや私の妻は刻々に、弱っていきます。もう刻々に弱って私の前から消えてしまいそうなんです」
「奥さんは何も仰有いませんか?」
「いえ、何も云いません。しかし彼の女は、云おうとしたこともあったようでしたが、やはり遂に云い出し得ませんでした。私は妻を助けようとしました。しかし私はまずかったので結局彼の女を怖れすくませてしまうだけでした。彼の女は私の古い家庭のこと、私の家庭の地方においての名聞、またその汚れない名誉と云ったようなものについて、言葉を触れさせることもありましたが、その時は私は、いよいよ大切な要点にゆくのだと思うと、もうその中(うち)に、話は外(よそ)に外(そ)れてしまうのでした」
「しかしあなた御自分で、気のついたものはありませんでしたか?」
「いやホームズさん、それはたくさんあります、私はぜひあなたにお目にかけたい、新な舞踏人の絵を持って来ました。そして更に重大なことは、私はある者を見たのです」
「ある者を、――それはその絵を画いた当人ですか?」
「そうです。私はその者が画いているところを見ました。いやとにかく、最初こう順序を立てて申しましょう。私がこの前にお訪ねして帰ってからまず、次の朝に新な舞踏人の絵を見たのでした。それは芝生の横にある、物置の真黒い扉の上に、白墨で画かれたものでしたが、私のところの正面の窓から目に止まったのでした。私はそれを正確に写し取って来ましたが、これがそれです」
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