报刊杂志精品选读 第16期
●「2位」に疑問
日本は本当に世界で2番目に豊かな国なのだろうか。国連開発計画がGDPや平均寿命、教育水準などをもとに判断する「人間の豊かさ」指数では昨夏時点で9位。電通総研など各国研究機関が実施する「世界価値観調査」(00年)では、「自分が幸せと思う人」の比率で29位。ベトナムやフィリピンより下位だった。
GDPは国内の経済活動で生み出されたモノやサービスの付加価値の合計だ。経済規模を示すもっとも代表的な国際指標だが、佐和隆光・京大経済研究所長は「社会全体の幸福度や達成度を測るモノサシにはなり得ない」という。
青森、岩手の県境。国内最大級の産廃不法投棄現場で、約87万立方メートルの廃棄物の撤去作業が進む。費用は約660億円にのぼる見込みだが、GDPという物差しでみれば、これも成長の貢献材料となってしまう。
心身を病む人が増えると膨らむ医療費、凶悪化する犯罪から身を守るための出費――。これらもGDPではプラスに勘定される。 こうした「負の要素」に伴うコストを差し引けば、GDPの指標はどう変わるのか。
中野桂・滋賀大助教授ら日本の研究者が、GPI(真の進歩指標)と呼ばれる新指標を使って試算したところ、バブル経済前の80年代半ばから00年に1人当たりGDPは約1・5倍になったが、GPIはほぼ横ばいだった。
マイナス要素としては自由な時間の喪失やストレスなどが大きかった。中野氏は「成長と引き換えに失われるものも多い。こちらの方が暮らしの実感により近い姿ではないか」という。
欧米など十数カ国でNGOや研究機関が同種の試算をしており、経済が一定の成熟段階に達した70~80年代以降、GDPの成長とGPIの減速との落差が目立っている。英政府も先月、「幸福の指標」を今後5年で作ると発表した。
「GDPが成長しさえすれば豊かさが高まるわけではなく、先進国には時代遅れの統計」と高橋伸彰・立命館大教授は指摘する。「それなのに成長自体が目的となり、ついていけない人間の不安と無力感が蔓延(まんえん)する社会が形成されつつある」(稲田清英)
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