您现在的位置:首页 > 双语阅读 > 小说与诗集 > 春之梦 > 正文

双语阅读:【青春小说连载】春の夢(92)

时间:2012-01-04 14:22:48  来源:可可日语  作者:dodofly

  小说《春之梦》发表于上世纪80年代,描写的是一位大学生的生活。父亲欠债而死,大学生哲之就流浪、打工,偿还所欠的债务。一只被钉到木柱子上的蜥蜴还活着,一直陪伴着他。还有他的爱情生活也激励着他生活。经过一年的奋斗,终于走出阴暗的生活。

七(13)

「キンちゃん。俺、もうどうでもようなった。もう疲労困憊で、ただ生きているだけや。働く気力もないし、泥棒をする勇気もあれへん。俺はあの石浜に勝ちたいだけのために、陽子の一生を変えてしもた。石浜がホテルから出て行きよったとき、俺は戦いに勝つ方法が判ったみたいな気がして体中(からだじゅう)が燃えてきたんや。こうやって、ひとつひとつに勝って行くんや。そう思たら勇気が湧いて来た。そやけどなァ、キンちゃん。自分だけが勝つということは、ほんまは勝ったんとは違うんや。陽子はどうなる?陽子が、俺よりもあの男と結婚したいと思うのはあたりまえや。その陽子の邪魔をして、陽子がそれで不幸になったら、俺は勝ったのと違うて負けたんや。偉そうに歎異抄にケチをつけたけど、あの哀しい嘆きの書物にうっとりとしてしまう心が俺にもあるんや」

そう言った途端、哲之は徹底的な虚無が、ある種の勇気につながっていくことを知った。けれどもその勇気は、人間を向上させるための勇気ではないような気もした。人間を向上させることのない勇気とはいったい何であろう。哲之は、身じろぎひとつせず四肢をふんばっているキンを見ながら、ぼんやり考えにひたった。彼は置きっぱなしの蒲団にもぐり込んだ。烈しい震えが歯をかちかちと鳴らした。自分の荒い息づかいに耳をそばだてているうちに眠りに落ちて行った。夜中の三時頃、哲之は苦しくて目を醒ました。震えはとまっていたが、頭が痛く、高熱に冒されているのが判った。蛍光灯は着けっぱなしで、キンが身をくねらせていた。明かりを消してやらなければ、キンは眠れないのだと思い、起きあがろうとしたが体は働かなかった。少しでも働くと猛烈な震えが襲ってくるのである。哲之の朦朧とした視力は、キンの体を貫いている釘を捉えられなかった。だから哲之は一瞬、キンが自由を取り戻し、いまにも壁を伝ってこの狭いアパートから広々とした天地へと去って行くような錯覚に駆けられた。もっともかけがえのないものが去って行く。哲之は哀しみに突き働かされて、やっとの思いで身を起こし、蛍光灯のスウィッチの紐を引っ張った。再び全身が震えた。
人の足音と、額に心地良い冷たさを感じて目をあけ、あたりを見廻した。蛍光灯が点いていて、夜であることだけは判った。しかし哲之は自分が何時間眠っていたのか見当がつかなかった。キンは柱に釘づけになっていた。枕元に水の入った洗面器が置かれ、その中に氷が浮かんでいた。額に手をやると、冷たいタオルが乗せられている。彼は身をよじって台所を見た。陽子が背を向けて鍋の中を覗いていた。哲之はいつまでもそんな陽子を見つめた。陽子が振り返り、ガスの火を消して枕元に坐った。
「いま、夜……?」

上一页 [1] [2] 下一页

相关阅读

文章总排行

本月文章排行

无觅相关文章插件,快速提升流量