双语阅读:【青春小说连载】春の夢(114)
小说《春之梦》发表于上世纪80年代,描写的是一位大学生的生活。父亲欠债而死,大学生哲之就流浪、打工,偿还所欠的债务。一只被钉到木柱子上的蜥蜴还活着,一直陪伴着他。还有他的爱情生活也激励着他生活。经过一年的奋斗,终于走出阴暗的生活。
九(1)
十一月に入って、キンがまったく餌を食べなくなった。哲之は小さな本棚から「日本の爬虫類(はちゅうるい)」という本をとりだし、「トカゲの飼い方」の項を読んだ。室内で飼育する際の注意として、赤外線ランプで日光浴の代わりをさせてやらないと餌の食べ方が悪くなると記載されてあった。一度読んで、頭に叩き込んでおいたつもりだったが、哲之は忘れていたのである。冬には、いっぺんに食べるだけ餌を与えおけば、一週間に一度で充分だとも書かれていた。キンが餌を食べなくなってもう二週間が過ぎていたので、哲之は、もうクリムシには飽きたのかと思い、アリとかクモとかをアパートの裏の雑草の生茂った空地からつかまえて来て与えてみたが、目をまばたかせるだけで口を開こうとはしなかったのである。
昼間、デパートの電気用品売り場で赤外線ランプを買い、哲之はホテルでのアルバイトを終えて、夜更けの寒い道を小走りで帰って来ると、さっそくキンに赤外線をあててやった。そしてふと思いついて、定規(じょうき)でキンの体長を測ってみた。キンが哲之の前の姿をあらわしてから今日までは、その体長は約一センチ伸びていた。
「キンちゃん、俺に釘で打たれたときは、まだ子供やったんやなァ」
哲之はキンにそう言った。彼は三十分近くキンに小声で喋りつづけた。あたかも日記をつけるように、その日その日の出来事や自分の心の状態をキンに語りかけることは、哲之の日課になってしまっていた。電車の中で盗み見た子連れの労務者の貧しい身なりと、子供に示すそのぶきっちょな愛情の表し方。大阪駅の構内ですれちがった裕福そうな婦人の、どこか生命力に欠けた横顔。フロント係のいじわる。横柄な客の、叩き返してやりたくなるようなチップのくれ方。どうやら自分の自惚れではなさそうな、グリル係の女子社員の遠くからのまなざし……。日記と同じように、哲之の言葉には嘘も混じっていた。その嘘に気づくと、彼は一篇の小説を即興ででっちあげている気になって、時に悲哀を感じ、ときに高揚し、ときに怒りに襲われた。
「俺、陽子がいてなかったら、たぶんあのグリル係の女の子を好きになってたやろなァ。高校を卒業してすぐに、島根県から、あのホテルに就職するために大阪へ出て来たんや。きょうも、コックが間違うて一個余分に作り過ぎたパイ皮包みのヒレステーキを、ナプキンで隠して、俺にそっと持って来てくれよった。俺、ちゃんと判ってるくせに、なんでぼくにくれるのん?て訊いたったんや。コックさんがくれたからやて。そんな答えになってへん。そやけどあいつ、なんでコックが自分にくれたのかはちゃんと知ってるんや。グリルのウェイいトレスをさせとくのん、勿体ないくらいきれいやもんなァ。あいつ、磨いたら凄い美人になるぞォ」
哲之は、キンにあまり急に長く赤外線を当てるのは良くないだろうと思い、スウィッチを切った。
「寝る前に、また十分ほど光を当てたるからな」
そう言って蒲団を敷き、机の上に積んである卒業論文のための資料を見つめた。ふと、夏の終わりに、烈しい夕立でずぶ濡れになりながら、ひとり御堂筋を歩いた日のことを思い出した。すると、自分以外の男の存在を陽子の口から聞いた夜の情景が甦った。ついいましがたまで石浜という建築デザイナーと逢っていた陽子が、口ごもりながら言った言葉を哲之は忘れていなかった。--もし、哲之と結婚せえへんのやったら、その人と結婚したいなァと思うーー。さらには、哲之の心の中に、どうしても消えない疑念がすっとくすぶりつづけていた。陽子は否定したが、本当はあの石浜という男と体の関係を持っていたのではないかと。それは、あれ以後陽子と逢瀬を重ね、以前に倍する愛情と、もはや決して敗れることはないであろう約束とを確かめ合っている最中でさえ、哲之の中からふっと湧いてで、過ぎ去った出来事であるにもかかわらず、いやしがたい嫉妬をもたらすのであった。彼はそのたびに、ラング夫妻のことを思い出した。それと、ラング夫妻の事件は何の関係もなかった。けれども、嫉妬と猜疑心が哲之の目を暗く鋭くさせるたびに、異国の閑雅な庭の中に建つ茶室を死に場所に選んだ老いたドイツ人の夫婦の、毅然(きぜん)さとよるべなさとがないまぜになった面立ちを思い浮かべてしまうのである。
「あのふたり、どうしてはるやろうなァ」
と哲之はキンに言った。
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