双语阅读:【青春小说连载】春の夢(113)
小说《春之梦》发表于上世纪80年代,描写的是一位大学生的生活。父亲欠债而死,大学生哲之就流浪、打工,偿还所欠的债务。一只被钉到木柱子上的蜥蜴还活着,一直陪伴着他。还有他的爱情生活也激励着他生活。经过一年的奋斗,终于走出阴暗的生活。
八(20)
「私、誰にも内緒で、その家をもう借りてしまったんです。敷金も払ったし、家賃も払いました。卒業したら、私も哲之も働いて、お母さんと三人で暮らすんです」
こんどは、哲之と母とがぽかんと顔をあわせた。
「敷金も払うたて、そんなお金、どないして工面しはったの?」
と母が問いただした。
「中学生のときから毎月貯金(ちょきん)していたお金に、アルバイトで貰った残りを足して、足らん分は横浜にいてる従姉に借りました」
陽子の声は、最後は嗚咽で聞き取りにくいほどに震えていた。母は身を乗り出し、自分のハンカチで陽子の涙を拭いてもらっていた。陽子は顔をあげ、目を閉じて、子供みたいに涙を拭いてもらっていた。
「私、女の子を産まいでよかったわ。年頃になったら、何をしでかすやら、ほんまに……」
それから母は立ち上がり、箪笥の引き出しから貯金通帳を出して、陽子と哲之に見せた。七十万円近くあった。
「こんなに、どないやって貯めたん?」
哲之に問いに、
「給料が手取りで十一万とちょっとやろ?そやけど、家賃も食事代もいらんから、毎月十万円貯金してきたんや」
と母は平然と答えた。
「ほな、一万円で毎月暮らして来たんか?
「お客さんが、ときどきチップをくれはるねん。中には一万円も二万円も、そっとたもとに入れてくれる人もいてはるねん」
母はペロッと舌を出し、
「私、昔から、へそくりの名人やったんやで」
と言って首をすくめた。
「よう出る涙やなァ……」
母は感心したように言ってまた身を乗り出し、陽子の涙を拭いた。拭いてもらいながら、陽子はくすくす笑った。くすくす笑っているのに、涙はあとからあとから溢れ出た。
陽子を駅まで送るため、母も一緒について来た。阪急電車の改札口で陽子と別れると、哲之は母と並んで歩を運びつつ、ラング夫妻の青い目を思い出した。ここ数カ月、いや、数年、あんなに必死に走ったことはなかったなと思った。テニスの試合中でもあんな悲壮な思いで球を追ったことはなかった。間に合ってよかった。ふたりを死なせなくてよかった。彼はそう思った。あのとき死なせてあげた方がよかったとは断じて思わなかった。ふいに母が歩を停めた。哲之が立ち止まって母を見た。
「あの娘、お嬢さん育ちやけど、あしたから借金取りの断りぐらい出来そうなことがあるなァ」
母はそう言ってから、哲之が嬉しくなるくらいの明るい表情を向け、こうつけ足した。
「あれだけ、さめざめと泣かれたら借金取りも逃げて行くわ」
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