双语阅读:【青春小说连载】春の夢(120)
提要:大家都知道钉子带来了痛苦,但不知道拔钉子的方法,也害怕拔钉子时的痛苦。虚无和达观使哲之丧失掉了做什么的力气。用缓慢的动作铺好被子,也不刷牙,躺了下来。关掉红外线灯,房间的照明灯也关掉了。嘟囔起中泽所醉心的《欢异抄》中的几句话。
九(7)
哲之は我に返ると、クリムシの入っている箱の蓋をあけた。キンは、やっと一匹だけクリムシを食べた。
「俺、絶対にキンちゃんを助けてやるからな。春が来たら、釘を抜くぞ。死ぬかも知れへんけど、俺は釘を抜くぞ。もしそれでキンちゃんが死んだら、もう二度とキンちゃんは蜥蜴になんか生まれへん。こんどは人間に生まれ変われるよ」
哲之は本気でそう思ったのである。そこには論理も生命の科学的法則もなかった。ただ生命というものに対する漠然とした不思議さが、彼に愚にもつかない確信をもたらしたのであった。そしてその確信は、自分の背にも突き刺さっている太い釘の存在を哲之に教えた。彼の脳裏に、母や陽子や磯貝や百合子や、隣室の婦人や、ラング夫妻や沢村千代乃の姿が湧きあがった。みなことごとく背中に釘を突き刺さしたまま、哲之に微笑みかけてきた。みな、釘に苦しめられていたが抜く術を知らなかったし、抜くときの痛みを恐れてもいた。虚無が、諦観が、哲之から何をする気力も喪(うしな)わせた。緩慢な動作で蒲団を敷き、歯も磨かず、哲之は横たわった。赤外線ランプの灯を消し、部屋の明かりも消した。中沢の心酔している歎異抄の幾つかの言葉を呟いていた。(いづれの行もおよびがたき身なれば、とても地獄は一定すみかぞかし)。(煩悩具足のわれらは、いづれの行にても生死をはなるることあるべからざるをあはれみたまひて、願をおこしたまふ本意、悪人成仏のためなれば、他力をたのみたてまつる悪人、もとも往生の正因なり)。(なごりおしくおもへども、娑婆の縁つきて、ちからなくしておはるときに、かの土へはまひるべきなり。いそぎまひりたきこころなきものを、ことにあはれみたまふたり)。
いづれの行もおよびがたき身、か。他力をたのみたてまつる悪人、か。いそぎまひりたきこころなきものを、ことにあはれたまふ、か。哲之には、どの言々句句からも、生への励ましを感じ取ることは出来なかった。一見悟りきった言葉も、ひと皮むけば、生きることに匙を投げた人の詭弁であるかのように思えた。死ね、死ねとあおりたててくるものに憎悪を抱いた。それならば、何も苦労して生きていくことはない。みんな死ねばいいではないか、と哲之は思った。「かの土」とは何だ。そんな浄土がどこにあるというのだ。見せてくれ。宇宙の果てまで行ったって、そんな場所はあるものか。それは俺の胸の中にある。俺は何度もそれを見た。逃げても逃げても、死んでも死んでも、この宇宙より外へは出られないのだ。哲之は、歎異抄が自分に生きるよすがを与えてくれた語っている著名な知識人の顔をテレビで観たことがあった。だが哲之には、どうしても、その人から覇気を感じられなかった。どこか弱々しく、しあわせそうな顔をしていなかった。諦観が、生きる意欲にすり替わっただけではないか。いかにもインテリさせる言葉の羅列だ。そしてついには死へと誘う毒を秘めている。彼は、自分の中にも確かにある。虚無と諦観の心を見つめ、生きようと思った。彼の心の中のキンは、金色に輝いた。陽子と逢いたくなった。陽子の体が欲しくなってきた。もうつまらないお芝居などやめようと思った。そう思いつつ、彼は自分の下半身をまさぐり、**(じい)にふけり始めた。いつまでも遊んでいた。しかし、哲之の**の対象になっていたのは、陽子ではなく、百合子のまだ見たことのない薄紅色の裸体であった。
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