双语阅读:《福尔摩斯之银色马》第15回
その晩、ロンドンへの帰りを、私達は寝台車の一隅に席を占めたが、前週の月曜日にダートムアの競馬場で起った出来事を、順序を追ってホームズは話し、そしていかにしてそれを解決するに至ったかを語り聞かせてくれたから、汽車の無聊を感じるどころか、ロス大佐にしても私にしても時間のたつのを知らなかったくらいである。
「実のところ、新聞の報道を根拠に組立てた私の意見は全然誤っていました。しかも、新聞の記事にも正しい暗示の出ていたことは出ていたのですが、いろんな他の事項のためにそれがかくされていたのです。デヴォンシャへ行くまでは、フィツロイ·シムソンが真犯人だと私は信じていました。もっとも彼に対する証拠は完全だとはむろん考えていませんでしたけれど。
ところが、いよいよ馬車でストレーカの家に着いた時に、ふと羊のカレー料理が非常に重要な意味を持っていることに気がつきました。あの時、私がぼんやりして、みんなが降りてしまったのにまだ馬車の中に残っていたことを覚えていらっしゃるでしょう。あの時私は、こんな明瞭な手懸りがあるのに、どうして今まで見逃していたろうかと、我れながらつくづく驚いていたのです」
「と仰しゃられてもまだ私にはさっぱり分りませんなあ」
大佐はいった。
「あれが私の推理の第一階梯となったのです。阿片末は無味なものではありません。匂いは不快ではありませんが、すぐに知れるものです。だから普通の料理にこれを混ぜれば一口でそれと気がついて食べるのを止(や)めてしまいます。そこでカレーを使えばこの味を消してしまいます。全くの他人であるフィツロイ·シムソンが、この夜あの一家に、カレー料理を食べさせるように仕込んだろうなんてことは、全然想像も許されないことです。それかといって、阿片の味を消す料理の出た晩に、折よくシムソンが阿片を使うつもりで来たと考えるのも、あまりに奇怪な暗合というものです。そんな馬鹿なことは考えられません。だから、シムソンはこの事件から除外することが出来、その夜の御馳走をカレー料理と定(き)めることの出来る人、すなわちストレーカ夫婦に我々の注意は集中されるわけです。阿片は厩舎に残ってるハンタの分として、別の皿へとり分けられてから入れたものです。同じものを食べた他の人達に、異状のなかったのでも知れます。では、女中に気づかれないようにその皿に近附いたのは夫婦の中(うち)果してどっちでしょうか?
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