双语阅读:《福尔摩斯之魔鬼之足》第1回
どんなきっかけからこの事件を思い出したのか、そしてどんな酔狂から公表されるべきだと望んだのかは分からない。だが急いで――ホームズからキャンセルの電報がくるかもしれない――この事件の詳細を正確に書き記したノートを探し出し、読者諸氏にその物語を聞かせよう。
あれは、そう、1897年の春、ホームズの鋼の体にも翳りが見られるようになった。きわめて厄介な依頼が連続的にやってきたこともあるし、おそらくは時折やらかす無茶の数々に拍車をかけられたのだろう。その年の3月、ハーレー街のドクター·ムーア·アガー――この人とホームズとの劇的な出会いについてはそのうちお話することがあるかもしれない――はこの有名な私立探偵に、全事件を凍結して完全な休息に身を委ねよ、さもなくば確実に体を壊すであろう、という強い勧告を与えた。ホームズは絶対的な知的独立性をもっていたから、健康状態など興味をよせるに値する問題ではなかったが、結局は、仕事を続ける資格を永久に失ってしまうだろうという脅しによって、新鮮な空気と風景のもとで静養することに同意した。そういうわけであの年の早春、我々はコーンワル半島の先端、ポルドュー湾に近い小さなコテージで過ごしていたのだった。
風変わりな場所、私の患者の重苦しい気分には妙によく似合った場所だった。我々の漆喰の家は草深い岬にあり、窓からマウント湾の薄気味の悪い全景を見おろすことができた。この半円形の湾では、無数の海の男たちが、黒く切り立つ崖と波に潜む岩礁によってその最後を遂げている。行き交う船にとって古くからある死の罠だ。北からの微風が吹く中、穏やかに、包み込むように横たわり、嵐に揺れる船に誘いかける。安息を求めて間切りこんでくるように、と。
そして、突如風が渦巻く。南西からの痛烈な突風。引きずられる錨。風下の岸壁。泡立つ破壊者(しらなみ)との最後の戦い。賢い海の男は、この魔の海に決して近づかないものである。
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