双语阅读:《福尔摩斯之银色马》第3回
「今晩は」男は窓から中を覗き込みながら、「実はお前さんに少々話したいことがあるんですがね」とハンタに声をかけたが、その時に手に握っていた小さな紙包の端がチラッと見えたと、後で女中は断言している。
「何用で来なすったのかね?」ハンタは反問した。
「お前さんの儲かる耳よりな話なんだがね。ここにはウェセクス賞杯戦に出る馬が二頭いる――白銀と栗毛と――お前さん確実な予想を教えてくれませんかね、決して悪いようにはしないが。重量の点で、栗毛は八分の五哩で白銀に百ヤードは分があるというんで、馬主筋はみんな栗毛に賭けたというが本当かね?」
「うむ、さては手前は馬の様子を探りに来たスパイだな? よしッ! キングス·パイランドではスパイをどう扱うか見せてやろう」とハンタは叫んで、犬を放しに走った。女中はそのまま家の方へ駈け戻ったが、走りながら振返ってみると、その男は窓から中へ半身を乗り入れるようにしていたという。けれどもそれから一分間後に、ハンタが犬をつれて外へ飛び出して見た時には、もうその男はいなかったので、厩舎のまわりを駈けずりまわって探してみたが、どこにも姿は見えなかった。」
「ちょっと」
私はホームズを遮った。
「ハンタは犬をつれて飛び出した時、厩舎の戸締りをしないでおったのかい?」
「素敵! 素敵だ! その点が非常に大切だと思ったから、僕は昨日ダートムアへ電報を打って訊ねてみた。ハンタは出る時鍵をかけたそうだ。そして窓は、人間の入れるほどの大きさはないという。
ハンタは仲間が食事から帰って来るのを待って、親方の調馬師に事の次第を報告に出かけた。ストレーカはそれをきくとひどく昂奮して、それが何を意味するか分らなかったらしいが、漠然たる不安を感じたらしかった。そして夜の一時に細君がふと眼を覚ましてみると、服を着かけていたという。細君が驚いてその理由(わけ)を訊ねると、馬のことが心配になって眠れないから、厩舎に間違いでもないかを見に行くつもりだという。ちょうど雨が窓を打つ音をきいたので、細君はどうぞ家(うち)にいてくれと願ったが、泣かんばかりに願ったが肯(きき)入れないで、大きな雨外套に身を包んでそのまま出ていってしまった。
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