双语阅读:《福尔摩斯之红发会》第9回
「ははん!」とホームズは言い、再び物思いに沈むのであった。「そいつはまだ店にいますね。」
「ええ、いるでしょうね。さっき店に残してきましたから。」
「あなたの留守中も、仕事に精を出しているのですか?」
「はい、文句の付けようもないほどに。それに、朝はすることなんてありゃしませんし。」
「よくわかりました。ウィルソンさん、一両日中には意見をお知らせしましょう。今日は土曜日、ですから月曜までには解決できることと思います。」
こうして、我々は訪問客を部屋から送り出した。
「さて、ワトソン。」ホームズは私に話しかけてきた。「今の、君はどう思うね?」
「さっぱりだ。」私は率直に答えた。「たいへん……謎めいた仕事だな。」
「概して、」とホームズは切り出す。「奇想な事件ほど、解ける謎は多い。ありふれて特徴のない犯罪が、真に我々を悩ませる。それはまさしく、ありふれた顔が見分けにくいのと同じだ。しかし、この事件に関しては迅速に動かねばなるまい。」
「これから、どうする?」
と私が尋ねると、ホームズはこう答えた。
「煙草を吸おう。ちょうどパイプ三服分の問題だ。これから、五十分間は話しかけないでくれたまえ。」ホームズは椅子に座ったまま身体を丸めた。足を抱え込み、やせたひざを鷲鼻(わしばな)の近くに持ってくる。目をつむって座る。黒いクレイ·パイプを怪鳥のくちばしのように口からつきだしたまま。ホームズは眠りこけたのだ、と思った。自らもうとうとしだしたときであった。ホームズは突然、椅子から飛び起きた。どうやら結論が出たようで、パイプを炉棚の上に置いた。
「今日の午後、聖(セント)ジェイムズ·ホールでサラサーテの演奏がある。」とホームズは言い出した。「どうだろう、ワトソン。診察の方は二、三時間休めるか?」
「今日は一日あいている。まったく暇な稼業だよ。」
「帽子をかぶって、来たまえ。中心区(シティ)を通って行くつもりだから、途中で食事でも摂ろう。見たところ、このプログラムにはドイツの曲が多い。イタリアやフランスのものより、ドイツの方が僕の趣味に合う。ドイツの曲は心の内に向かう。僕も今、内に向かいたいんだ――さあ、行こうか。」
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