双语阅读:【日本经典小说连载】东京塔(152)
东京塔这部小说从“我”一点点长大,一直写到“我”目送着母亲因病去世,各种生活细节每每令人感同身受,因而赚取了读者大把的眼泪,也当之无愧地成了哭泣小说的首席代表。
筑豊のばあちゃんはもうしばらく心臓を患っていて、山の中腹にある病院に入院している。ばあちゃんの所へ行ってやれとオカンが言った。
友達の時枝君が遊びに来た。同級生がもう、自分の車に乗っている。
「ばあちゃんの病院まで、乗せて行ってくれんね」
卒業してから一度もばあちゃんの顔を見ていなかった。ベッドで横になっているばあちゃんの顔は、ミイラのように頬(ほお)がこけて、入れ歯の入っていない口は、魚のように開いていた。
真夏の炎天の中でも、真冬の木枯らしの中でも、魚を積んだ重いリヤカーを引いていたあのばあちゃんの姿はもうなかった。
ひとりで、この薄暗い病室にいて、静かに息をしている。
「ばあちゃん……」
ボクが声を掛けると、ばあちゃんは少し笑って、何度も同じことを言う。
「マーくんね……。どうね、頑張りよるね……」
「うん……。頑張りようよ……」
「そうね……。あんたにね、あげようと思うてからね。そこにね、百万あるやろうが、その百万でね、鍋をね、買いなさい」
そこにある百万円というのはカタチはなかった。もう、意識はだいぶおぼろげになっていて、何度も、百万円やるから鍋を買え。あんたのために、貯めたんよと繰り返した。
ボクは何度も、そのたびに「ありがとう。東京で鍋を買うけんね」と言った。
涙をこらえて、病室から出た。階段の踊り場で声を上げて泣いた。情けなかった。切なかった。そして、一番悲しかったのが、もうこれが、ばあちゃんに会う最後になるのだと直感的にわかったからである。
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