双语阅读:【日本经典小说连载】东京塔(185)
东京塔这部小说从“我”一点点长大,一直写到“我”目送着母亲因病去世,各种生活细节每每令人感同身受,因而赚取了读者大把的眼泪,也当之无愧地成了哭泣小说的首席代表。
五月にある人は言った。
東京でも田舎町でも、どこでも一緒よ。結局は、誰と一緒におるのか、それが大切なことやけん。
十五の時にオカンの元を離れてから十五年。ボクとオカンは東京の雑居ビルで、また一緒に暮らし始めた。
2DKの狭い部屋で、子供の頃のように親子ふたりで暮らすことになった。今までオカンとボクは食堂の隅にある小部屋、閉院した病棟、親戚の家、色々な所に移り住んだけれどいつもどこかで気兼ねをしていて、お互いその場所を自分の家だと感じたことはなかったと想う。
そしてまた、騒音にまみれたボウリング場の上というおかしな所に住んではいるけれど、もう、自分の住む場所を恥ずかしいとも、落ち着かないとも感じることはなかった。親戚や知人にお世話を受けて住んでいるではない。誰かの住まいに居候(いそうろう)しているのでもない。
借金をして借りた場所だけれど、不動産で契約金を納め、月月の家賃を自分で払って住んでいる。誰にも頭を下げることもなく暮らせる家だ。その気持ちは、ボクよりもオカンの方がずっと強く感じていたことだと思う。
年老いても自分の家と呼べる場所もなく、親類の好意の中を転々と暮らしてきたオカンにとってこの笹塚の家は今までで一番心地良い家だったに違いない。
オカンとボクが、初めて心から自分の家だと思える家にようやく、辿り着いたのだ。
「ずっと田舎者やったのにから、六十過ぎて突然、渋谷区民になったんやね」
住民票を移し、ボクの扶養家族になり、保険証の名前の順番が十五年前と変わった。
そして、ボクには実家と呼ぶ場所がなくなった。福岡に戻っても、もう帰る家がない。それはオカンも同じことだった。ボクたちにはもう帰る所がない。このボウリング場の上に浮かぶ部屋が、ボクたちの実家になった。
「荷物持って来ても置くとこないよ」
引越し前に釘を刺しておいたのだが、実際に送られて来たのはいくつかの段ボール箱だけで、想像していた以上に少ないものだった。気を使って、ほとんどのものを処分してきたのだろう。それに数年前、病棟の借家(かりや)に住んでいた頃、そこに泥棒が入って、大切にしていた着物類は全部盗まれてしまっていたから、財産というものもあるはずはなかった。
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