双语阅读:【日本经典小说连载】东京塔(183)
东京塔这部小说从“我”一点点长大,一直写到“我”目送着母亲因病去世,各种生活细节每每令人感同身受,因而赚取了读者大把的眼泪,也当之无愧地成了哭泣小说的首席代表。
上京まで、オカンとまめに連絡を取った。
「家具とか持って来ても置くとこないよ」
「あぁ。なんも持って行かんよ。着替えだけしか持って行かん」
成り行きでことが始まり、どんどん具体的になってゆくにもかかわらず、まだどこかで、オカンがここに住むという現実感が湧かない。
ここにやって来ることはわかっているのだけど、ボクが学生の頃、オカンがたまに上京して来たように、しばらく居たら、また九州に帰って行くような気もしている。
それはやはり、オトンのことがボクの中で引っ掛かっているからだろう。オカンにとっても、オトンと暮らす方がいいのだと思っていたボクは、いつか実現してほしいその日のためのつなぎだと考えていたのである。
上京の日も近くなったある日。
なにげなく、ボクはその話をしてみた。ボクとオカンの間で、夫婦のこと、オトンのことを話すことは今まで一度もなかった。それは、知らないうちにお互いのルールのようなものになっていて、そうなった理由も、オカンはオトンとのことについてはまるで話さないことに始まりがある。
「東京に来るのは全然いいんやけど、オトンはどうするん?ふたりとも、もう年なんやけん、いずれはもう一回、一緒に住んだ方がいいんやないんね。いつかはそうしたらいいって、オレは思いよるけど」
電話口で大人ぶって喋るボクは、いいことを言っているつもりでオカンにそう言った。
顔の見えないオカンの声が一瞬、答えを言いよどんだ。そして、しばらくの間があった後、少し尖った口調でこう言ったのだった。
「……。オトンは他の女の人と住んどるんよ。もう、ずっと住んどるんやからね」
そんな単純なことをボクは考えなかったのか。オカンの口からそれを聞いた時、ボクはさっきまでの自分をマヌケに感じて胸が詰まった。
オカンのことを、ボクはまるで知らないのだと思った。
でも、その事実を知って、ずっと聞かされていなかったその話を聞いて、今まで宙ぶらりんだったオカンとの同居生活に対するボクの気持ちも、完全に腹をくくれる気合いが入った。
それを言ったきり、電話の向こうで黙り込んでいるオカンにボクは力強く言葉を掛けた。
「それやったら、死ぬまで東京におったらええ」
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