2005年日语能力考试一级真题:阅读&语法部分
問題Ⅱ 次の(1)から(3)の文章を読んで、それぞれの問いに対する答えとして最も適当なものを1・2・3・4から一つ選びなさい。
(1) 昼下がりのカフェ(注1)でのこと。男女の争う声に振り向くと、ひとりの女が立ち上り、持っていたグラスを逆さにして飲み物をこぼし始めた。
客達の視線が集まる。連れの男は顔を上げようとはせず、女の腕を掴(つか)んで座らせようとするが、女はその手を振り払うと、叫んだ。
「あんた(注2)なんか最低よ!」ほかの客が言っている声が聞こえる。「ドラマみたいね」いささか陳腐(ちんぷ)(注3)だったが、①女は「演じること」ですっきりしたのかもしれない。
現実的ではないことを、「ドラマみたい」とよく言う。
13年前の朝のことだった。洗面台と洗濯機とのわずかな隙間(すきま)に頭を突っ込んで、母が全裸で倒れていた。意識はなかった。救急隊員(きゅうきゅうたいいん)(注4)の緊迫(きんぱく)した(注5)医療用語が飛び交い、心臓マッサージが始まる。オレンジ色の毛布を掛けられた母は、ピクリとも動かない。その隙に、開(あ)け放(はな)たれた玄関から飼い猫が外へ出てしまった。当時、大学生だった弟が、とっさに猫を捕まえたその時、「猫なんか構っている場合ですか!」と隊員の怒鳴り声が飛んだ。弟は、②猫を抱いたまま立ち尽くしていた。後は、「かかりつけの病院(注6)は?」と、はじかれるように聞かれたことだけしか思い出せない。これがドラマなら、大概は「姉弟で『お母さん!』と駆け寄って下さい」と指示される。人間は、とっさにとんでもないことをする。長年、人間を見つめる仕事をしてきた
はずが、人の本当とはなにか、いまだに捉(とら)えきれないでいる。
(岸本加世子「岸本加世子の台本にないセリフ」2003年1月11日付朝日新聞による)
(注1) カフェ:飲食をする店の一つ
(注2) あんた:あなた
(注3) いささか陳腐(ちんぷ)だ:よくある情景だ
(注4) 救急隊員(きゅうきゅうたいいん):急な病気や事故にあった人を病院まで運ぶ職員
(注5) 緊迫(きんぱく)する:物事の様子が非常に緊張し、油断のできない状態になる
(注6) かかりつけの病院:いつも見てもらっている病院
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