魔幻小说:《伯爵与妖精》卷一第三章3.5
妖精が見える、金緑の瞳に光が射し込む。
「おはよう、リディア」
こともあろうにエドガーは、ニコの隙(すき)をついて、リディアの手を取って口づけた。
「は……、何すんのよ、このスケベ!」
あわててリディアは飛びのいた。
「べつに何も。きみの猫が見張ってたし」
本当に、こんな軽薄(けいはく)野郎に同情してよかったのかよと思いながら、ニコはため息をつく。
「おいリディア、スコーンもらってきてやったぜ、朝メシにしよう」
ニコが放り投げたスコーンを、両手で受けとめながら、彼女はまだ不審(ふしん)げにエドガーを見ていた。
「もう嫌われたかと思っていたから、また会えてうれしいんだ」
「……嫌いよ。あたしはうそつきが嫌いなの。だからあなたも嫌い」
「でも、見捨てないでくれたわけだ」
「それは、あたしはフェアリードクターで、あなたに依頼を受けたからよ。だけど、青騎士|卿(きょう)の宝剣を手に入れてあげるっていうんじゃないわよ。メロウが守っているなら、あなたの手の届くものじゃないってことをはっきりさせるため。メロウは、悪い妖精じゃないけど危険な力も持っているわ。それをあなたみたいな、妖精を認めない無謀(むぼう)な強盗に教えるのもフェアリードクターの役目だからよ」
「僕の身を案じてくれると取ってもいいのかな」
「……ていうか、あたしのポリシーの問題なの」
「力を合わせて、きっと宝剣を手に入れよう」
「ちょっと、エドガー、人の話聞いてる?」
「ああ、その名で呼んでくれるんだね」
「……だって、あなたの本当の名前なんでしょ?」
「うれしいよ、リディア」
まるでエドガーのペースだ。手を握られてリディアはたじろぐ。
「あなた、本当は死ぬ気なんかなかったんじゃ……」
当たり前だろ、とニコは思う。
「きみがいてくれたから生きてるんだよ。命の恩人だ」
「いいからもう、離して!」
この男、危険なメロウよりやっかいかもしれないぞと、ニコは先が思いやられるのだった。
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