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魔幻小说:《伯爵与妖精》卷一第四章4.6

时间:2011-09-20 13:23:39  来源:可可日语  作者:ookami

 やっぱり、あのあばら屋で逃げればよかったかもと、少々後悔をおぼえていた。
 けれど同時に、リディアはフェアリードクターとしての責任感でマナーン島へ行くことを決めたのに、協力を強制するかのように脅されたことに腹が立った。
「待ってよ。あたしを脅(おど)そうったって無駄(むだ)よ。あたしは、自分がするべきだと思ったことしかするつもりはないわよ」
「……妖精博士(フェアリードクター)というのは、ずいぶんと自由なのですね」
「そ、それはそうよ。フェアリードクターは強制されてなるものじゃないもの」
「うらやましい。私は生まれ落ちたときから、強制的に精霊の奴隷(どれい)です。戦いと殺戮(さつりく)の精霊が私の中にいて、ときには私の意志や肉体もあやつります」
「えっ、今もいるの?」
 そこに何かがひそんでいるとでもいうみたいに、彼は胸に手をあてた。
「はい。王にしか従わない精霊、これを持って生まれた者は、かつては王の戦士でした。けれども故国は、すでに英国の植民地、王はもうおりません。精霊は従うべき主人もなく、無差別に血を求める。それを救ってくださったのがエドガーさまです。今は、あの方が精霊の主(あるじ)」
「それじゃあ、彼が命じれば、あなたの意志に関係なく、精霊が人を殺すってこと?」
「エドガーさまは命じたりしません。ですから精霊は、私が主人の敵と感じた相手に襲いかかります。けれども主人の敵とはいえ、むやみに人をあやめるわけにはいかないのが今の私の立場。手加減をおぼえなければなりませんでしたし、自分で状況を判断し、危険の程度を推(お)し量(はか)らなければならなくなりました」
「……当たり前のことだわ」
「そうですね。でも私は、それまで自分という意志があることすら知りませんでした。精霊が暴れるのを止める方法も知らず、幾度(いくど)もあたりを血の海にしました」

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 冷や汗を感じながら、リディアは納得していた。十字の入れ墨を持つというサー・ジョンが、殺人鬼と呼ばれた所以(ゆえん)は、レイヴンを連れていたことによるのだと。
「それでもエドガーさまは私を見捨てることなく、赤子のように無知だった私に、大切なことをいくつも教えてくださいました。そうしてようやく、人間らしい自由を得たのです。あの方のために働くことが私の使命。主を失えば、私の魂は、残忍な精霊に支配されてしまうのですから」
「なら、エドガーでなくても、主人がいればいいんでしょう?」
「では、たとえばあなたに、私を引き受けることができますか? ほうっておけば不愉快(ふゆかい)な人間に片っ端から噛(か)みつく猛獣(もうじゅう)の、犯した罪をすべて背負い、善悪を教え、飼い馴らすことができますか。そうしてその凶悪な存在に、けっして殺戮を命じないということが」
 猛獣使いになど、なれるわけがない。けれどもエドガーは、そのうえひとりの人生を引き受けているというのだ。
 命じさえすれば邪魔者(じゃまもの)を排除してくれるというしもべを持ちながら、けっして命じない。そうやってレイヴンの意志を守るというのは、やさしいようで難しいのではないだろうか。
 要求をしないところで成り立つ、完璧な信頼関係。
 だからこそレイヴンは、エドガーが命じなくても、彼のためだと判断すれば、手を汚すことをためらわないのだろうと思った。
「リディアさん、あなたが私のことを不愉快に思うのは当然です。ですからどうか、エドガーさまを困らせるようなことはなさらないでくださいね」
 やっぱり脅されてるんだわと思いながら、立ち去るレイヴンを見送る。

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