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魔幻小说:《伯爵与妖精》卷一 第三章3.2

时间:2011-09-08 14:23:26  来源:可可日语  作者:ookami

リディアは、エドガーから少し離れて、きしむ椅子に腰をおろした。
「どうして? 人をだましたり脅したり、思い通りにするのは得意じゃないの、伯爵(はくしゃく)さま?」
「魔法は解けてしまったよ」
「あたしは最初から魔法になんか惑わされてないわ」
 そうだろうか、と思いながらもリディアは強がる。
 今も、この人が持つあやうい魅力に抗(こう)せず、ここにとどまっているのではないのだろうか。
 そう思いながらも、心の中で強く否定する。
 それはたしかに、乙女心をくすぐる容貌や言葉を持っている人だけれど、リディアが彼に感じているのは、そういうあまいものではなく、むしろ怖いもの見たさだ。
 生まれながらの貴族のようでいて、残忍な犯罪者。巧みな話術と完璧(かんぺき)な微笑(ほほえ)みで人を虜(とりこ)にしてしまう。けれどその華やかな振る舞いで真実をかくし、うそで他人を利用する。
 なのになぜ、彼女をかばって怪我をしたのか。
 ニコの言うように、リディアの同情を買うためなら安いかもしれないが、それは結果的にそうなったのであって、あのとき一瞬の判断で、そこまで考えたとは思えない。そもそもあのときのリディアの行動は、無謀(むぼう)すぎてふつうならあり得ないことだろう。
 だから、謎めいた彼の、真実を知りたいと思ってしまう。
 けれどそれも、彼が使う魔法なのだろうか。

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「ねえ、あなたは誰なの? ロードエドガー? それともサージョン?」
 フロックコートを脱ぎながら、しばし迷って、彼は答えた。
「エドガー、それが僕のファーストネームだった」
「だった、ってどういうこと?」
「死んだからだよ。十二のとき、その名を持つ少年は、両親とともに死んだ。反逆を疑われ、父は家族を殺して自殺。家系は断絶。だから、今の僕は亡霊だ。君の好きなように呼べばいい」
「でも、あなたは生きてるじゃない」
「そう、生きてはいる。……レディの前で悪いけど、失礼するよ」
 そう言ってジレと、そして血で汚れたシャツも脱いでしまうと、整った眉(まゆ)をひそめながら傷を確かめる。
 どのみち、暖炉から離れた彼のいる場所は薄暗く、リディアはべつに気にならなかった。
 エドガーは、淡々と言葉を続けた。
「でもね、助けられたわけじゃない。目覚めた場所は地獄、アメリカ南東部の町だ。……白人|奴隷(どれい)をほしがっていた男に売られたわけで、死んだはずの人間は、そこでは人間じゃなかった。四年目にそこから逃げた。レイヴンとアーミンと一緒にだ。下町に身をひそめ、追っ手をかわし、生きるためには何でもした」
 壮絶な話を聞きながらも、怪我(けが)の手当を手伝う気になれないのは、やはり不信感でいっぱいだからだろう。
 これだって、本当かどうかわからない。
「強盗殺人も? 本当に、百人殺したの?」
「噂(うわさ)ってのは尾ひれが付いて大きくなる」
「どうなのよ」
「僕らは最下層のゴミだめにいた。同じ年頃の少年たちが、盗みや身体(からだ)を売るかして、ようやくしのいでいる場所だ。野良犬のように生きているだけで、文字も読めず、考えることもせずあきらめきっている。けれど彼らは知らないだけだ。大金が眠っている場所も、どうすればそれに手が届くのかも、それが世間では存在しないはずの、表に出せないきたない金だということも」
「……そうやって、主人(サー)になったのね」
「ドブネズミの王様かい? まあそうかもね。王様は、軍隊を指揮するだけ。計画を立て、人を配置し、武器を与え、『|行け(ゴー)』と命じる。戦場では死人が出ることもあるだろう。それはたしかに僕の責任なのだから、人を殺したことがないとは言わないよ。でも、きみが不安になるといけないから言っておくけど、渡した報酬(ほうしゅう)は盗んだものじゃない。日雇いの仕事もしたし、いかさまギャンブルで巻き上げた金を元手に、ああ、こういうのもお気に召さないかもしれないけどね、ともかく事業に出資し株を買い集めた。それが今の僕の財産だ。幸運にも、貴族を名乗っても疑われないくらいにふくらんだ」

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