魔幻小说:《伯爵与妖精》卷一第四章4.6
リディアは急いでドアから離れた。
暗い廊下(ろうか)を走って逃げる。どうしてあたしが逃げなきゃいけないのよ、と思いながらも、エドガーとアーミンのあんな場面を見てしまっては気まずいとしか言いようがなかった。
話までは聞こえなかったが、しっかり抱き合っていた。
あのふたり、できてるの?
恋人がいるのに、誰にでもあまい言葉をささやくなら、ずいぶんな軽薄(けいはく)男だ。
「どうでもいいんだけど」
なぜだか落ちこみそうな気分を、追い払うように言い捨て、リディアは階段を駆け下りようとする。と、踊り場の暗がりから、ぬっと人影が現れた。
「きゃあっ!」
思わず声をあげ、しりもちをつく。
「すみません、レディ。大丈夫ですか?」
レイヴンだった。リディアは急いで立ちあがった。
「あ、あの、台所へ行こうと思って。寝る前に熱いミルクがほしいなって……」
何も問われていないのに、言いわけめいてしまう。どうにもレイヴンには、エドガーに対する危険人物と目をつけられているような気がするからだ。
紅茶をかけるわ、怪我(けが)をさせるわ、嫌われても当然なのだが、無表情に物騒(ぶっそう)なことを言ううえ、ケンカのレベルではない戦闘能力を見せた彼は、さすがに恐ろしい。
「でしたら、私がお持ちします。お部屋でお待ちください」
「い、いえっ、けっこうです。そんな、毒入り……、じゃなくて、あの」
「毒?」
鋭い視線が向けられる。一瞬で首をへし折られた男のことを思い出す。駅舎でハスクリーたちに取り囲まれたとき、彼女にナイフを突きつけた男だ。骨の砕けるいやな音を間近で聞いてしまったけれど、自分の場合でも聞こえるものなのだろうかと考えれば、リディアは怖くなってパニックになった。
「や、来ないで、……殺さないで!」
「すみません」
「え」
いきなりあやまられ、思わず顔をあげて彼を見る。
「私が恐ろしいのですね。気がつかなくてもうしわけありませんでした」
相変わらず無表情だったが、リディアは急に罪悪感をおぼえた。
もしかしたら、傷つけてしまったのではないか。レイヴンがリディアに何かしようとしたわけではないのに、勝手に怯(おび)えて人殺し扱いしてしまった。
あのときだって彼は、ごろつきのナイフからリディアを守ってくれただけだ。
思い直した彼女は、立ち去りかけたレイヴンを呼び止めた。
「あの、ごめんなさい。……ひどいこと言ったわ。あなたのこと傷つけるつもりじゃ……」
振り返った彼は、不思議そうにも見えた。
「人殺しが恐ろしいのは当然です」
「でも、あたしを殺そうとかしたわけじゃないのに」
「…………」
そこで黙り込まれれば、ひどく不安になる。
「え、まさか、あたしを殺すつもりなの?」
「今のところ、それがエドガーさまの利益になるとは思えません」
「利益って……、じゃあ場合によってはあたしを殺すのね」
「お答えできかねます」
気味が悪い。宝剣を探す協力を渋ったりすれば、エドガーは今のところリディアに向けている好意を裏返すかもしれないということだろうか。
そうなったらレイヴンは……。
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