《伯爵与妖精》卷二:小心甜蜜的陷阱第一章1.3
空は低く曇り、霧がうっすらと立ちこめはじめていたが、木々のある場所はそれだけで落ち着ける。
こんな天気だから人の姿は少なく、枝の間から顔を出すリスや小鳥に紛れて、小妖精の姿があった。
スコットランドの森とはくらべものにならないが、ロンドンにもまだまだ妖精はいるようだ。リディアに見られているのがわかると、妖精の見える人間がめずらしいらしく、わらわらと集まってきた。
ベンチに腰かけ、リディアは妖精たちのおしゃべりに耳を傾ける。それは意味を追うよりも、小鳥のさえずりを聞くように音を楽しむのが心地いいと、知っている人は少ないだろう。おだやかな時間を過ごしているうち、急に視界が悪くなってきた。たまたま霧の濃い部分に入り込んでしまったようだと思いながら、リディアはくぐもった犬の吠え声を耳にしていた。
妖精たちがさっと散っていく。犬の声はさらに近づいてきているようだ。
「やだわ、ニコ。野良犬でもいるのかしら」
「冗談じゃないぜ。おれは消えるからな」
「え、ちょっと、ニコ!」
彼が消えると同時に、すぐそばの茂みがガサリと動いた。
うなりながら、大きな野犬がリディアに歩み寄る。一匹、二匹と集まってきて彼女を囲む。
「やだ……、来ないでよ!」
飛びかかってこようとした一匹に、思わず缶詰を投げつけた。命中して、犬は地面に転がったが、かえってほかの犬を刺激してしまっただけだ。
枝をもぎ取ろうとしたとき、木の背後から人影が現れた。
霧の中から浮かびあがってくるかのような、黒ずくめの大きな姿。
「霧男(フォグマン)……」
思わずつぶやいたのは、妖犬を引き連れ霧の中から現れるという不吉な妖精を、彷彿(ほうふつ)とさせる姿だったからだ。
男はリディアに手をのばす。
きつい薬品の匂いが漂い、クラリとする。
何?人さらい?
- 相关热词搜索: 伯爵 妖精
- 上一篇:日语短文精听:选自日本小学课文《日本小学生的下午》
- 下一篇:《伯爵与妖精》卷二:小心甜蜜的陷阱第一章1.4
相关阅读
- 《伯爵与妖精》片尾曲~My Fairy~08-26
- 魔幻小说:《伯爵与妖精》卷一第三章3.409-09
- 魔幻小说:《伯爵与妖精》卷一第三章3.611-16
- 魔幻小说:《伯爵与妖精》卷一第四章4.209-10
- 魔幻小说:《伯爵与妖精》卷一第四章4.309-19
- 魔幻小说:《伯爵与妖精》卷一第五章5.809-26