《伯爵与妖精》卷二:小心甜蜜的陷阱第一章1.6
「そう、……そんなに嫌われてるとは思わなかった」
「あの、そういうわけじゃなくて」
去りかけた彼を呼び止めるように、リディアは立ちあがっていた。
「なら、嫌われてないのかな僕は」
くるりと振り返ったエドガーにいきなり手を握られる。
「べつに、嫌いってほどでも……」
「どちらかというと好き?」
「は」
女の子ならきっと誰でも、あまい幻想をいだいてしまうだろう微笑(ほほえ)みが目の前にせまる。
「ど……、どっちでもないわ! あたしは伯爵家のフェアリードクター、それ以上でも以下でもないんだから、下世話な話はやめて。手を離してちょうだい」
彼の目を見たまま、どうにか毅然(きぜん)と言えたと思う。
苦笑いを浮かべたエドガーが、手を離してくれたのだから、色気も何もありはしないと、気分を害してくれたのだろう。
「わかったよ。ならきみがよろこんでくれそうな話をしよう。霧男(フォグマン)って知ってる?」
背を向けかけていた彼女は、思わず彼に向き直った。
「霧男がどうかしたの?」
「ふうん、妖精の話になると、金緑の瞳が輝くんだね。さしあたり、僕の強力なライバルは妖精ってことか」
リディアはもう、エドガーのぼやきなど聞いていなかった。公園で襲われかけたときのことを思い出したからだ。
もちろんあれば、妖精などではなく人間だったけれど、今また霧男という言葉を聞くなんて、何かの因縁(いんねん)だろうかと思う。
「それについて、きみの意見を聞きたいというご婦人が来ている。いやなことがあったばかりで、もし疲れていないなら、会ってみてくれるかい?」
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