《伯爵与妖精》卷二第二章魔兽的妖精之卵2.4
「でもエドガー、女の子たちの間で流行(はや)ってる妖精卵占いは、瑪瑙じゃなくてガラス玉を使うんでしょう?」
世界にひとつしかない妖精の卵という宝石を、占い遊びに使うわけはない。
「ああそう、ここまでは僕の興味の話」
興味って、妖精に興味なんかないくせに。
「そっちの妖精卵なんだけどね、売ってる場所がわかったよ。見に行かないか?」
「え、これから?」
「それできみを誘いに来たんだ。クリモーン庭園(ガーデンズ)の、日曜だけのイベントらしい」
そしてエドガーは、カールトンを見る。
「カールトン教授、これからリディアさんと出かける許可をいただけますか? 彼女にお願いしているフェアリードクターとしての仕事のことなんです」
「仕事なら、リディアが行くというのを止めるわけにもいかないが、もう夕刻だよ。遅くなりそうなのかな」
「あの手の遊戯施設(プレジャーガーデンズ)は、最近風紀が乱れていると聞きますからね」
ラングレーが心配そうにリディアを見た。
「用が済めば、きちんとお宅までお送りします。それに僕がついていますから、ご心配には及びませんよ」
スリやかっぱらいの巣窟(そうくつ)に紛れ込んだって、彼ほどあぶない人はそうそういないだろうと思い、リディアはあきれた。けれども、問題の妖精卵について調べるなら、現物を手に入れ、どんなふうに売られているのか、知っておく必要はあるだろう。
それに、エドガーにも確かめたいことがある。
「行きます。ちょっと待っててくれます? 用意をしてくるわ」
立ち上がりかけたリディアに、ラングレーが声をかけた。
「あのー、リディアさん、忘れてました。よかったらこれ」
差し出されたのは、リボンで束ねた数本のマーガレットだ。
「いつも手ぶらでおじゃましてばかりなので。ああそうだ、今日はビスケットをごちそうさまでした」
「まあ、ありがとうございます」
それは素直にうれしくて、リディアはにっこり微笑(ほほえ)んだ。
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