《伯爵与妖精》卷二第四章高贵的恶魔4.3
しかしこの小部屋からは出られたとはいえ、倉庫そのものの入り口の鍵(かぎ)は閉まっていた。こちらは鉄の扉で、壊れそうにない。
それでも、天窓から射し込む明かりとじゅうぶんな広さがあるだけ、さっきよりは落ち着いていられた。
そういえば、ロザリーはこの倉庫の鍵を持っていて、自分でここを開けたのだった。
どうしよう。まさかこのまま何日もほうっておかれて衰弱死……、なんていくらなんでも、そこまでするつもりはないと思いたい。
別の出口がないか、リディアは建物の奥を調べることにした。
ロザリーが鍵を持っていた。子供のころにもここへ来て、少年を見つけたというのだから、ここは彼女の家の所有物なのだろうか。
しかし、だとすると、少年をここへ閉じこめていたのは、彼女の家の誰かだということになる。
つまり、エドガーを売りとばした人物が、ロザリーの身近に……?
だんだん、頭が混乱してきていた。
リディアは肝心(かんじん)なことを何も知らないまま巻き込まれているからだ。
たぶんエドガーは、いろんなことを知っている。知っていて、何かたくらんでいる。
リディアはたぶん、彼のたくらみに利用されている。
「あいつ、隠してることはもうないってうそばっかり……、きゃあっ!」
また声をあげることになったのは、床板を踏み抜き、転んだからだった。
立ちあがろうとしたとき、か細い声が聞こえた。
「誰か……いるんですか?」
若い女性の声だった。
「え、だ、誰?」
「すみません、あの、わたし、ドーリス·ウォルポールと言います」
「ドーリス……、男爵(だんしゃく)令嬢の?」
「はい……。あの、差し支えなければ助けてくださいませんか? もしあなたが、悪い人たちのお仲間でないなら」
声のするドアの前へ歩み寄る。その部屋もドアに掛け金がかけられていて、中から開けることができないようだった。
リディアが掛け金をはずしてやると、中から出てきた女の子が、倒れるようにリディアに寄りかかった。
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