《伯爵与妖精》卷二第四章高贵的恶魔4.3
「ロザリーさん? 何をするの? 悪ふざけはやめて」
「ふざけてなんかないわ」
「ここを開けてよ!」
激しくドアをたたいたが、ロザリーはクスクス笑うだけだ。
「はっきり言って、あなたじゃまなのよ。伯爵(はくしゃく)とは釣り合わないんだから、もう彼に近づかないで」
「バカなことやめて!」
「わたしの妖精が、あなたに思い知らせるためにはこうするのがいちばんだって言うから、しばらくここでおとなしくしててちょうだい」
「……ボギービースト……、あいつの言うことなんか信用しちゃだめ! それにエドガーは、彼もきっと何かたくらんでるわ。ロザリーさん、あいつのあまい言葉にだまされちゃだめよ!」
「ほらやっぱり、わたしに嫉妬(しっと)してるのね」
「あーもうっ、ちがっ……」
「じゃ、ごきげんよう、リディアさん」
その言葉を最後に、リディアがいくらドアをたたこうと、外からの反応がなくなった。
「……どうしよう、ニコを連れてくるんだったわ」
けれど彼は、伯爵家のやわらかい椅子(いす)と紅茶を気に入っていたから、仕事部屋に居残っていた。まだ家に帰ってきてもいないだろう。
「ほんと、いざってときにいないんだから」
とにかくリディアは、こみあげる不安と動揺を押し込め、冷静になろうとした。
大声を出して助けを求めてみる。しかしこの近所は空き家ばかりだったように思う。
戸の隙間(すきま)からもれるかすかな光しかない小部屋は、ますますリディアを絶望的な気持ちにさせた。
エドガーも八年前、こんな気持ちでここにいたのだろうか。まだ子供だったうえに、衰弱(すいじゃく)した状態でこんなところに。想像するだけで、息苦しくてたえられない気持ちになる。
じっとしていられず、もういちど声をあげてドアをたたく。力任せに体当たりしてみる。
と、バキッという音とともにドアが壊れ、リディアはドアの残骸(ざんがい)と一緒に外側へ倒れ込んだ。
「うそっ……、やだ、あたしそんなに怪力じゃ……。まあ、掛け金のところが腐りかけてたんだわ。古い倉庫で助かったかも」
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