《伯爵与妖精》卷二第四章高贵的恶魔4.5
伯爵(はくしゃく)邸へやって来たカールトンが、リディアが帰ってこないとエドガーに告げたとき、すでに彼はあちこち娘を捜し回った様子で、そのうえ乗り物を使うことを失念し、歩いてここまで来たらしかった。
家政婦の話では、昼すぎに早退してきたというリディアは、カールトンの書斎(しょさい)にこもっていたが、夕方になってまた出かけたのだという。
そのときリディアは、忘れ物を届けにいくと言って、外出というほどでもない軽装だったらしい。
「すみません、伯爵。もしかしたらまた用ができて、こちらにいるのではないかと思ったもので」
玄関先でリディアがいないことを確認すると、カールトンはすぐまた出ていこうとした。
「カールトンさん、どうか気を落ち着けてください。これから僕も、心当たりを訪ねてみますから」
引き止めながら、エドガーはそう言う。
執事(しつじ)に外套(がいとう)と帽子を用意させ、レイヴンを呼ぶ。
話を聞いたエドガーは、すぐさまロザリーのことを思い浮かべていた。
演奏会のあと、伯爵邸へ戻ってきたところ、ロザリーが落とし物をしたと騒ぎ出した。レイヴンが、拾ったものをリディアに渡したと言ったとたん、血相を変えて飛び出していったからだ。
彼女の落とし物について、レイヴンは、「イースターエッグのような石」だと言ったが、エドガーは〝妖精の卵(たまご)〟だと直感していた。
それはかつて、彼が持っていたものだった。
エドガーが育った家、広大なマナーハウスの一角にあった『|驚異の部屋(ワンダーチェンバー)』は、先祖代々の収集|癖(へき)によって、古今(ここん)東西の珍品であふれかえっていた。文字通り、訪れる人を驚かすための部屋。あやしいいわく付きのものも数知れず、正体不明のミイラや剥製(はくせい)の数々を愛(め)でる感覚は、悪趣味だが貴族の間ではめずらしいことではなかった。
〝妖精の卵〟は、そこに飾られていたもののひとつだ。
薄い葉脈(ようみゃく)で包まれているかのようにも見える縞模様(しまもよう)、中に閉じこめられた水。石の中でその影が動くのが不思議で、子供心に惹(ひ)かれていた。
それが瑪瑙(めのう)だということも、〝妖精の卵〟という異名(いみょう)を持っていることも、それにまつわるいわくも知らないまま、父のものである『驚異の部屋』から勝手に持ち出していた。いつでも、ポケットに入れていたのは覚えている。けれどいつなくしたのかは覚えていなかった。
- 相关热词搜索: 伯爵 妖精 第四章 高贵 恶魔 4.5
- 上一篇:大家一起听歌词:第18期 Every Heart BOA
- 下一篇:日语能力考试二级阅读理解精讲精析(16)
相关阅读
- 《伯爵与妖精》片尾曲~My Fairy~08-26
- 魔幻小说:《伯爵与妖精》卷一第三章3.409-09
- 魔幻小说:《伯爵与妖精》卷一第三章3.611-16
- 魔幻小说:《伯爵与妖精》卷一第四章4.209-10
- 魔幻小说:《伯爵与妖精》卷一第四章4.309-19
- 魔幻小说:《伯爵与妖精》卷一第五章5.809-26