双语阅读:【日本经典小说连载】东京塔(34)
东京塔这部小说从“我”一点点长大,一直写到“我”目送着母亲因病去世,各种生活细节每每令人感同身受,因而赚取了读者大把的眼泪,也当之无愧地成了哭泣小说的首席代表。
Ⅱ(9)
ボクらは、それを怖(こわ)がらずに、どこまでトロッコに乗っていられるかを競っていた。トンネルの中で轟音(ごうおん)が響き、それを抜けると終点に向かって加速しながらトロッコは直線を進んだ。
たまらず、前野君が飛び降りた。ボクも耐え切れず飛び降りる。別府君と石炭を積んだトロッコがまっすぐに蟻地獄へ向かって行った。完全に逃げ遅(おく)れていた。あっ!?と思って背筋が冷たくなった瞬間、トロッコはドカンという音と共に、石炭と別府君を粉砕機の中へ放り込んだ。恐ろしくなって叫んだ。
すると、背後から炭坑の人が怒鳴りながらすごい勢いで駆けて来た。どこかに向かって手を大きく振り、大声を出して、機械を止めるように言っているようだった。
その人が石炭の蟻地獄に飛び込んで、ザラザラと下に持って行かれている別府君を助け出した。途中で機械の音も止まった。
ボクたち三人は、その人にメチャクチャに叱られ、ベコベコにぶたれた。子供はこういう悪フザケ死んでしまうことがあるだろうなと、今はわかる。
あの時、もしあの人が居なかったらと思うと本当に恐ろしい。別府君はどこかの家庭の燃料になっていただろう。それ以来、一度も、現在に至るまでトロッコには乗っていない。これからも乗らないだろう。乗る機会もないんだが。
オカンは夜になると、近所の料理屋さんに仕事に出掛ける。眠っているうちに帰って来る。時々、帰って来た時に目を醒ますことがあった。料理屋の匂いと酒の匂いが部屋の中でふくらむ。蒲団の横にある鏡台で、化粧を落として、化粧水をはたいている様子を蒲団の中から見ていた。硝子の瓶に入った化粧水のキャップを回す音や、ひたひたと顔につけている化粧水の音が心地良く好きで、オカンが帰って来た安心感と静かな部屋に小さく響く化粧瓶の音が、また、眠りを誘った。
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