双语阅读:【日本经典小说连载】东京塔(105)
东京塔这部小说从“我”一点点长大,一直写到“我”目送着母亲因病去世,各种生活细节每每令人感同身受,因而赚取了读者大把的眼泪,也当之无愧地成了哭泣小说的首席代表。
Ⅳ(4)
ボクはまだ、不安も淋しさも知らなかった、期待と予感にただ、心を弾ませた。なにか目標があるのでも、夢を抱いているのでもない。ささやかな自立をした喜びと、あのボタ山に自分も埋もれるのではないかという恐怖感から少し距離を置けたことの安堵だけだった。
学校の手続きや生活の準備を済ませて、筑豊の家に戻ると、オカンとボクが、つい先週まで一緒に住んでいた病院の借家に、もう、ボクの荷物はない。ベッドも机も運ばれて、畳にその重さの跡を残しているだけだった。
親元を離れてゆく子供。その時の遺された親の感情はどういうものか、それはボクにはわからないけど、今のうちにいっぱいおいしいもんを食べとかんといけんねぇと言いながら、毎日御馳走を作ってくれるオカンの表情、炊事場に立つ後ろ姿、ベッドのなくなった部屋に蒲団を敷いているオカンの顔が、ずっと笑っているのにどこか淋しそうに見えた。
それまで、どんな小さな部屋、おかしな家、親戚の家に居候させてもらう時も一緒だったオカンとボク。みっともないことも、恥ずかしいことも一緒にだったオカンとボクは、これから別々に暮らすことになる。
家賃と定食屋に払う食事代と、その他に二万円。月月仕送りを貰いながら、今まで以上の負担をかけることになる。心弾む気持ちと、心苦しい気持ちが胸の中で弾き合った。
出発の日。無人駅のホームに桜の花が小雪のように降っていた。見渡すかぎり田んぼが広がり、その向こうにはボタ山が見える。なんの色味もないその風景の中にぽつりと綿菓子のような桜の木がぼんやり浮かぶ。
一日八本しか運行してない汽車を、ホームの椅子でオカンと持った。
「ちゃんと身体に気をつけてから、しっかり勉強せんといかんよ」
「うん……」
「鞄の中に、おにぎり入れとるけん、汽車の中で食べんしゃい」
「うん……」
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