双语阅读:【日本经典小说连载】东京塔(106)
东京塔这部小说从“我”一点点长大,一直写到“我”目送着母亲因病去世,各种生活细节每每令人感同身受,因而赚取了读者大把的眼泪,也当之无愧地成了哭泣小说的首席代表。
Ⅳ(5)
なにかオカンを安心させるようなことを言わなければと考えていても、言葉が出て来なかった。春の匂いと、温かい風がズボンの裾から入ってくる。オカンの足が小さく見えた。オカンはどう思っているのだろう?淋しくはないのだろうか?お金のことは心配ないのだろうか?なにも言えないうちに、二両編成のディーゼル車両がガタガタとホームに滑り込んで来た。
「着いたら電話するけん……」
「頑張りなさいよ」
車掌の吹く笛の音が鳴ると、古いディーゼル車のドアはゆっくり閉まった。オカンは働き出す汽車に合わせて、歩きながら手を振った。短いホームの先端まで追いかけて、ずっと手を振っていた。見晴らしのいい単線のまっすぐに延びた線路の向こうで、オカンがどんどん小さくなっていった。
ボクはちゃんと手を振ることもできずに、その姿をただ、ずっと見送っていた。
窓の外の風景が町になってゆく。しばらくして、旅行鞄のチャックを開けると、紙の弁当箱と新品の下着を入っていた。海苔を巻いた俵型のおにぎり四つと、鳥の唐揚げ、玉子焼きに今朝オカンがぬか床から上げた胡瓜の漬物が入っている。そして、弁当箱の下には、ボクの名前を書いた、白い封筒があった。
そこには、ボクが高校に合格して本当にうれしいのだ、オカンのことは心配せず、身体に気をつけて、一生懸命頑張りなさいと書いてあった。自分のことはなにも記さず、ただボクを励ます言葉だけが力強く書いてあった。そして、"母より"と締めくくられたその便箋(びんせん)と一緒に、しわしわの一万円札が一枚出てきた。
ボクはおにぎりを食べながら涙が止まらなくなった。
血の池地獄、坊主(ぼうず)地獄、竜巻地獄、海地獄、鬼山地獄、山地獄。別府にはまだたくさんの地獄がある。
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