双语阅读:【日本经典小说连载】东京塔(144)
东京塔这部小说从“我”一点点长大,一直写到“我”目送着母亲因病去世,各种生活细节每每令人感同身受,因而赚取了读者大把的眼泪,也当之无愧地成了哭泣小说的首席代表。
Ⅴ(14)
「まだまだつまらんのぉ。なんの勉強しよるんか?なんか?あの字は?」
就職の件でも留年の話でもなく、暖簾の文字のことだった。
「だめやった?なんで?」
「真面白くさってから、堅苦しい字やのぉ。誰も入って来りゃあせんぞ、アレは」
そう言われても納得がいかず、店の壁に目をやると、オトンの書いたお品書きの短冊が何枚も掛けてある。
しかし、そのどれもがほとんど読めない。もしかしたら、"築前煮"かな?あれは"筍"のなんなんだろう……。全部がその調子である。お品書きひとつにも芸術を爆発させないと気が済まない人なのである。
「ぜんぜん、なんて書いとるか読めんわ」
「読める必要があるか」
いや、ある。なぜなら、オトンに発注したお品書きを誰も読めないため、結局、オカンが自分で書いた小さなメニューをテーブルやカウンターに置いているのだった。
でも、今ならわかる。オトンの言う通り、ボクの暖簾の文字がダメだという意味も、オトンの読めないお品書きの文字がいいのだという良さも。
店を閉めて、三人で病院の家に帰った。親子水入らずというのもいつからなかっただろう。オトンも本当はそうだったかもしれないが、ボクとオカンは何かそわそわした。
オトンはボクらに会いに来る時は決まって小倉のおじいちゃんがいた和菓子店の和菓子を買って来る。
三人で和菓子を食べた。網戸から入る風が蚊(か)取り線香の匂いを運ぶ。
オカンとオトンが籍を抜いたという話はまだ聞いてない。なんだかんだと言いながら、このふたりは最終的にはまた一緒に暮らすのではないかと、ボクはふたりを眺めながら思った。そうなってほしいと思っていた。
なんとか大学は卒業できそうだ。周囲はまた、就職活動をする同級生で慌しくなった。この会社は可能性があるとか、おもしろいことをやってるとか、それまでバカ丸だしの大学生だった友人も、この時期になると急につまらないオトナの仲間入りをする。友達同士で話すことと、面接官と話すことの区別がついていない。
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