双语阅读:【日本经典小说连载】东京塔(163)
东京塔这部小说从“我”一点点长大,一直写到“我”目送着母亲因病去世,各种生活细节每每令人感同身受,因而赚取了读者大把的眼泪,也当之无愧地成了哭泣小说的首席代表。
その上、こいつの段ボール箱は全部「らでぃっしゅぼーや」とプリントしてある。
「らでぃっしゅぼーやってなに?」と聞いてみたところ、こいつ貧乏なくせに、野菜は無農薬(のうやく)でなければ身体に良くないですから、宅配野菜をとっていますという、大変に面倒臭い男。
それでも、歩いて十五分の銭湯に行く時も、自動販売機の返却口に手を入れて小銭を探す時も、えのもとがいるおかげで泣かずに済んだこともある。
「イラストレーターになりたいんです」
そんなこっ恥ずかしい台詞もなにを照れることもなくえのもとは言う。
「やめとけ、やめとけ」。ボクが言ってもやけにえのもとの眼は澄んでいる。
月に何度かしなかいボクの仕事。ひとりでやれば三十分で終わるモノクロのカットも、ベタだけ残し「えのもと、ベタ塗りたのむ」「はい、わかりました」とイラストレーターごっこをしていた。
あの頃にボクが見ていたものはどんな風景だったのだろうか?たとえ食うに困るような暮らしをしていても、自分の将来や未来に不安を感じて薄暗くなることはなかった。
それよりも目先のことで精一杯だったからかもしれないが、なんの根拠もなく、きっとこの先は、今よりも少しはマシになっているはずだと思って疑わなかった。
なにも始まってないうちは、なにも怖くない。
なにひとつ確かなもののない生活だったけれど、日々を退屈だと思ったことがない。
何かを手にした人にこそ、退屈と怯えは肩を並べてくるものだ。
「オカン、来週仕事先の人と九州に行くけん、泊まりに行くけんね」
仕事相手と友達関係になることはほぼないが、出版社に勤めていたWとはお互いがくすぶっていたタイミングで出会ったらしく、すぐに意気投合した。
出合って二週間も経たないうちにWから旅行の誘いを受けた。
なんでも、彼女と海外旅行をする予定で一週間ほどの休暇を取ったものの、その彼女とはつい先日別れてしまい、ただ休みだけが残ったらしい。かといって、ボクとその海外旅行を実行するのもいかがなものかと思ったようで、ならば車で九州を一周しようという、ヤケクソで男臭いプランだった。
横浜生まれのWだが、銀行員の父親は以前小倉の銀行にも転勤した経験があるらしく、なので小倉の街にも行ってみたいのだと、無理矢理に九州旅行を意味づけようとしているようだ。
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