双语阅读:【日本经典小说连载】东京塔(164)
东京塔这部小说从“我”一点点长大,一直写到“我”目送着母亲因病去世,各种生活细节每每令人感同身受,因而赚取了读者大把的眼泪,也当之无愧地成了哭泣小说的首席代表。
ボクはしばらく福岡には帰っていなかったし、なんだかその不毛な旅もおもしろいと思って、一緒に出発することにした。Wとは海外旅行雑誌の仕事を一緒にしていたが、そこでコラムを書いているボクは海外どころかパスポートすら持ってはいなかった。
東京を出発して、Wのハイラックスは東名高速を滑りだした。ボクは車の免許を持っていないので、もっぱら選曲と居眠り。興が乗ってくれば助手席で弾き語り。ノンストップで広島辺りに差し掛かったところで、高速道路は全面通行止めになっていた。この辺りは山間部を道路が通っているため、気温が低く路面が雪で凍結していたのだ。チェーン装着かスパイクタイヤでないと走れない。
長距離運転の疲れですっかりドライバーズハイになったWは、この車はスタッドレスタイヤを履いているから大丈夫だと料金所のオジサンに食い下がっていたが、結局、そこのパーキングエリアで数時間足止めを食うことになってしまった。
「九州に近づいて行っているのに、雪が降ってると思わなかったよ。もうさ、この辺りから、料金所のオヤジもアロハとかで出てくんのかと思ってたのによォ」
だいぶ九州を勘違いしている様子のWはあきらめたようにシートをフラットに倒した。
関門海峡を渡って九州に上陸したのは早朝で、若松にあるオカンの家にまっすぐ向かった。若松には若戸大橋という赤い鉄製の長橋がある。工業地帯を抜けて戸畑区と若松区を結ぶ全長二キロほどの橋だ。
青い洞海湾の上、真っ赤に塗られたその橋はまるで東京タワーを横に倒したようだと子供の頃から思っていた。
橋を降りるとすぐに、オカンの借りている家がある。その火野葦平ゆかりの家に行くのはボクも初めってだった。
到着するとオカンはエプロンをしたまま飛び出して来て、Wに深々に頭を下げた。
「まあ本当、遠い所からわざわざ来てもろうて、たいがい疲れたでしょう。お風呂も沸かしとりますけん、早よ上がってゆっくりして下さい。この子が運転できんもんやけん、ひとりで大変やったでしょう」
オカンは息子の仕事相手という者を初めて見たことに緊張しているようだった。金の無心ばかりして、一体、東京でなにをやっているのかさえわからない息子が仕事相手を連れて来た。とりあえず、息子はなにかしらの仕事をしているのだということがわかったらしく、うれしそうにこまごまと働いていた。
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