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魔幻小说:《伯爵与妖精》卷一 第三章3.3

时间:2011-09-08 15:21:23  来源:可可日语  作者:ookami

 二十歳(はたち)そこそこの青年なのに、文字通り身ぐるみはぎ取られ、名前も身分も過去も失い、ただ自分の能力だけで生き残ってきたというのが真実なら、この魅惑的な微笑みの裏に何を隠しているのか、他人にわかるはずもない危険な人だ。
 彼が手にしているのは、剣(レピア)を仕込んだ杖。リディアは身体を硬くする。
「青騎士卿(きょう)の物語と伝説は、子供のころから知っていた。あの金貨は、アメリカの骨董品(こっとうひん)屋で手に入れた。いずれイギリスへ帰り調査をするつもりだった。だが僕は、ロンドンにいてもゴッサムに監禁(かんきん)されたまま、動きが取れない。だからゴッサムに金貨を見つけさせ、スターサファイアの隠し場所だとそれとなく教え、奴が調べあげてくるのを待った。レイヴンとアーミンが迎えに来るまで、奴に殺されるわけにはいかなかったから、その駆け引きも時間を稼(かせ)ぐにはちょうどよかったんだ。そのせいで、こうして奴と、宝をめぐって争わなければならなくなったけれどしかたがない」
「……でもそれじゃ、あなたは青騎士卿の子孫じゃないわけでしょう? あたしを協力させたって、本物でないなら、メロウが守ってるっていう剣を手に入れるのは無理よ」
「それでも僕は、宝剣を手に入れるしかない」
「にせ物の身分を手に入れて、うれしいの? 本当のあなたの名前を取り戻すべきじゃないの?」
 少し身を屈め、彼はリディアに顔を近づけた。
「にせ物には価値がないと思うのは、間違いだよリディア。反逆の烙印(らくいん)を押された家名を取り戻して何になる? 奴隷の少年も、ギャングのリーダーも死んだ。にせ物でも、僕には大きくて存在感のある名前が必要なんだ。僕を地獄に引きこんだ連中が、誰も手出しができないだけの、確実な力がいる。伯爵(はくしゃく)の身分が手に入らないなら、本当にゴミだめで死ぬだけだ。きっと、にせ物を本物にしてみせるよ」
 やさしく説き伏せるようにそう言って、杖(ステツキ)をリディアの目の前に差しだした。

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「な、何なのよ」
「強盗が刃物を持っていては、きみが眠れないだろう? あずけておくよ」
 リディアから離れ、彼はまた隅の壁際に座り込んだ。
 本当の自分は墓の中。そこから他人の所有物として偽りの生を生きてきたなら、すべてはうそ。この人にとっては、本物もにせ物もなく、価値あるにせ物かそうでないかの違いだけ。
 リディアに語ったことも、本当かどうかわからない。
 けれどこの人なら、ガラス玉をまとってもダイヤモンドに見せてしまうだろう。リディアは、そんなふうに目をくらませられながらも、なぜガラスをダイヤだと思ってはいけないのかと、彼の主張に巻き込まれそうになった。
 もしかしたら、この人が身につける青騎士伯爵の称号は、他の誰より似合うかもしれないという、奇妙な感覚にとらわれる。
 そのうえ彼は武器をあずけ、あくまでリディアに対し紳士的な姿勢を見せている。同情を引こうという意図なのかもしれないし、じっさいリディアは、彼が悪人ではないと思いたがっている。
 けれどもちろん、警戒心もある。わざわざ武器をあずけるのは、リディアに逃げ出す気があるかどうか、試そうというつもりなのではないか。
 逃げられれば、エドガーは困るはず。青騎士卿の宝剣を手に入れるのは困難になるし、ハスクリーたちや警察につかまる危険も増す。
 少女のひとりくらい、ステッキをあずけたところで、どうにでもできると思っているのかもしれない。
 なら、逃げるそぶりを見せたらどうするのだろう。犯罪者の本性を見せるのだろうか。
 そんなものを見てしまう前に、眠り薬を飲ませてしまうのが賢明だ。

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