魔幻小说:《伯爵与妖精》卷一第三章3.4
金緑の妖精族の瞳に、エドガーは、自分がどんなふうに映っているのかわからなくなった。
いつもなら、他人に自分がどう見えるのかわかっているつもりだ。意識して自分を演じわけ、相手に与える印象をつくり出すのには慣れているはずなのに、リディアは、極悪人になりきろうとしたエドガーの、いくつもの仮面の奥を見透かしたかのようだった。
行かないでくれと、ただの心情を吐き出すしかできなかったなんて、自分でもあきれる。
死んでやるなんて、どう考えても脅(おど)しにもならない。
けれどもう、どうでもいい。
いっそのこと、毒を盛ってくれればよかったのにと思う。
ただの眠り薬は、しかししだいに眠りの力を薄め、彼を覚醒(かくせい)へと誘(いざな)う。
光がまぶたを刺激する。
エドガーは、ゆっくりと目をあける。
朝日があばら屋の天井から、壁の隙間(すきま)から身体(からだ)の上に注ぐ。
ああもう、夜が明けてしまった。
ひとりきりの夜明けが。
「みゃあ」
鳴き声を耳にし、身体を起こしたエドガーは、首にネクタイを結んだ灰色の猫を、窓枠のところに見つけていた。
リディアの猫だ。なぜここに、そう思うと同時に、暖炉(だんろ)のそば、椅子(いす)の背もたれに寄りかかり、彼の杖(ステツキ)を抱いたまま眠っている少女の姿が目に映った。アリードクターの役目だからよ。
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