魔幻小说:《伯爵与妖精》卷一第四章4.7
メロウは賢く美しく、ときには危険な妖精だ。嵐の前に海上に姿を現す、不吉(ふきつ)なしるし。海で死んだ人の魂を好んで集めるともいう。気質は人とよく似ていて、人間と親しくなる場合もあるが、中には血を飲む種族もいる。
何よりも、その美しい歌声が問題だ。人はとりこにされ、彼らの思うままに海の底へ引きこまれてしまうというが、その魔力に抗(こう)する力が、おそらくないのだから恐ろしい。
彼らがその気になれば、人にはほとんど抵抗するすべがないのは、嵐のただ中の小舟と同じ。
新米フェアリードクターのリディアは、多少の知識はあってもメロウと接するのははじめてだし、駆け引きができるとは思わなかった。
できればエドガーに、メロウの恐ろしさをわかってもらって、宝剣をあきらめてもらえないだろうかと考えていたが、どうやら彼は、そんなに簡単な人ではなさそうだ。
いざとなったら、エドガーを見捨てることになるのだろうかと、リディアは考えてみる。
(キャラメル色。そう言った方がきみには似合う)
たったそれだけの言葉が、リディアの心に染みこんで、彼が死ぬのをただ見ていることができるのだろうかと不安になる。
犯罪者で、うそつきで、いまだリディアに重要なことを隠しているらしい彼。
それなのに、もしも自分がメロウを説得できるなら、彼は青騎士伯爵になれる、彼が本来属していた、明るい場所へ帰ることができるのだと考えてしまう。
そんな実力が、リディアにあるはずもないのに。
「奴らなんざ、メロウに引きずり込まれて溺(おぼ)れちまえばいい。どうせ悪党だ。その方がさっぱりするってもんさ」
しっぽにハゲをこしらえられたからか、ニコはやけに過激になっていた。
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