魔幻小说:《伯爵与妖精》卷一第四章4.7
フェアリードクターとして、メロウに接する難しさよりも、エドガーを筆頭に彼らの不可解さの方が、もしかしたらリディアにとって大きな問題になるのかもしれない。
リディアには想像もできない、暗い世界を生きてきた人たちに、単純な同情を寄せたのは、間違いだっただろうか。
エドガーとふたりでいる間に、リディアは、少しは彼のことがわかったような気になっていた。根から悪い人ではないと思うし、リディアにはこれまで無縁だった、やさしさや気遣(きづか)いも持って接してくれた。
単なるご機嫌取りだとわかっていても、リディアにとってつらかったり傷ついたりする言葉から、彼はさりげなく救ってくれる。
計算だけではない、本質的な人柄もあるのではないかと思った。
けれどたった今見かけた、アーミンとのこと、そしてレイヴンの話を聞けば、またリディアにとって、エドガーが謎だらけの人に見えてくる。
「あたし、だまされてるの?」
「ああまったく、だから信用するなって言ってるだろ」
いつのまにやらニコが、不機嫌な顔つきで階段の手すりに座っていた。
「やっぱり奴ら、ヤバイ連中だぜ。見てくれよ、しっぽの先が焦(こ)げちまった」
「まあ、どうしたの?」
「エドガーの奴に、暖炉(だんろ)に放り込まれそうになったんだよ。どうやらおれ、まずいことを立ち聞きしちまったらしいな」
「立ち聞きって、何を?」
「はっきり聞いたわけじゃないけどさ、奴らはまだ、あんたに隠してることがあるんだ。どうしても宝剣を盗むために、よからぬことを計画してるみたいだぞ」
「……そう」
「とにかく、マナーン島にはあんたの見立てどおり、メロウが棲(す)んでいて宝剣を守ってるようだからな。この先が問題だ」
「宝剣を守ってるって、それもたしかなの?」
「島出身の小妖精(チビ)どもが、メロウが主人に何かをあずかったらしいことは言っていた。でもって、主人が戻ってこないことを嘆(なげ)いてるらしい」
「地主さんは、メロウが城に棲んでるって言ってたわ。とすると、宝剣が隠されているのは、城だってことなんでしょうね」
「なあリディア、奴のためにあんたがメロウと争う必要はないんだぜ。わかってるよな」
「ええ、……そうね」
どのみちリディアは彼らの仲間ではない。エドガーが本物の青騎士|伯爵(はくしゃく)の血筋でないなら、メロウは宝剣を渡さないということをはっきりさせようとしているだけだ。
けれども彼に引き下がるつもりはなく、メロウととことん争うつもりだとしたら、リディアは争いに巻き込まれることになる。
「やばくなったら逃げるしかねーな。メロウにかなうわけないし」
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