魔幻小说:《伯爵与妖精》卷一第五章5.1
「城の入り口の鍵(かぎ)です。どうぞお使いください。伝説の宝物を見つけようと、戸や窓を壊す連中が絶えませんでしてね、修理も大変なもので、最近はそれと申し出られた方にはお渡しすることにしています。それから、失礼を承知で申しあげておきますが、室内の調度品や貴重品などは数も種類も管理されておりますので、持ち出されたりしませんよう。たとえそうしたくとも、この島から運び出すのは不可能だとご記憶くださいませ」
「しっかりしているな。きみになら、これからも執事をまかせておけるだろう」
不遜(ふそん)にもエドガーは言う。
「光栄にございます。なお、この島を去る気になりましたなら遠慮なくおっしゃってください。すぐに船を用意します」
「そうやって、あきらめた者もいるわけか?」
「残念ながら私の知る限り、どなたもこうしてお話しした三日以内に、浜辺に藻屑(もくず)と一緒に打ちあげられておりますな。そういうことですのでサー、このままお別れとならぬよう祈っております」
「あの、城へ行った人は、みんな海で死んでるってことですか?」
リディアは、まだ波にゆさぶられる感覚から脱しきれないままだったが、会話はどうしても気になって口をはさんだ。
「そうですよお嬢さん。メロウに海へ引きこまれたのでしょう」
城でメロウの唄う声が聞こえると、翌日浜に死体があがるという言い伝え、リディアは昨日地主に聞いたことを思いだしていた。
「あなたは、メロウを見たことがあるんですか?」
「純粋なメロウは存じませんがね、島の者は皆、メロウの血を引いています。だからこそこの島は、遠い昔、もともとの領主の手に余り、青騎士卿に譲渡(じょうと)されたとか。島民はメロウと一緒に、新たな主人をたいそう歓迎したと伝えられております」
「メロウの血を? とするとご亭主、あなたにも水掻(みずか)きや鱗(うろこ)があるのかな?」
「いいえ、背中にひれが」
「さすがは青騎士伯爵家の執事だ」
エドガーは、冗談だと思っているのだろうか。ただおもしろがっているようだった。
「どうりで魚くさいと思ったよ」
ニコがひっそりとつぶやいた。
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