魔幻小说:《伯爵与妖精》卷一第六章6.8
「それはわかりません。ただあれからずっと、長い年月が過ぎても、正しく謎を解ける人が現れなかったのは、そういうことなのでしょう。これまで伯爵家の後継者は、長くても百年を待たずに、妖精国と人の領地を行き来しておりました。けれどもう、伯爵家の人間がいないなら、妖精博士(フェアリードクター)にしか、ここへ来ることはできないだろうと思っておりました。あなたがそうでいらっしゃいますね」
「それであなたたちは、フェアリードクターを待っていたの?」
メロウの少女は、切なげに頷(うなず)いた。
「メロウ一族が、この海に暮らすことを許してくださったのは伯爵です。伯爵が、人とわたしたちとの間を取り持ち、平和に暮らせるようにしてくださいました。けれど伯爵がいなくなり、年月が過ぎ、島の人々に混じるメロウの血は薄れ、隔(へだ)たりができてきました。わたしたちは宝剣を守るために、島の周囲の海を絶えず波立てるものの、海へ投げ出すのは盗賊(とうぞく)ばかりで、もともとは村人や島を訪れる人々にはけっして迷惑をかけないよう、お互い合図を送りあっていたのです。けれどもしだいに、その方法が忘れ去られ、わたしたちは島に近づく船が盗賊か漁師か商人か、見分けられなくなってしまいました」
「それでこの島は孤立しているのね」
「メロウの数も減っております。ここでの暮らしに失望し、故郷の海へ帰った者も少なくありません。でもわたしたちのほとんどは、伯爵との約束を破るわけにもいかなかったのです」
メロウは剣を、リディアの手に握らせた。
「けれどこれで、約束は果たされました。剣は人間界のもの。この島も、人の土地。わたしたちは去ります。人の土地を治める者は、妖精国から来た青騎士卿の子孫でなくても、事足りるでしょう。すべてはおまかせしたいと思います」
柄(つか)に埋(う)め込まれた大きなサファイアに、引き寄せられるようにリディアは見入った。
そして気づく。サファイアの中に六すじの光がない。
高貴な碧(あお)い石、サファイアの結晶に、夜空の星を閉じこめたかのようなスターサファイアは、石の中に放射状に、乳白色の光が輝くめずらしい宝石だ。なのにこの、シルクの光沢を持つサファイアには、星の輝きだけがない。これではスターサファイアではなく、ただのサファイアだ。
「……星がないわ」
「それは伯爵が持っておられるのです。伯爵家のしきたりでは、宝剣を置いていくときは必ず、サファイアの中の星だけを抜き取って、身体のどこかに刻みつけることになっています。それを受け継いだ後継者がいないなら、宝石に星を取り戻すことはできません」
『メロウの星は星とひきかえに』
そうだったのか。あれは本来、伯爵の後継者が受け継ぐはずの、サファイアの中の光のことだ。青騎士伯爵の宝剣は、人の魂ではなく、伯爵がこの宝石から取り去っていた『星』そのものを、再び石に戻すことで得られたはずなのだ。
けれど本物の伯爵が現れない。メロウは約束に縛られ続ける。だから解釈を変えるしかなかった。
メロウの国に星のごとく瞬(またた)くのは、死者の魂。それとひきかえに、メロウは約束を果たすことにしたのだ。
でも、だとしたら……。
リディアは何か貴重なことを思いついたような気がしながら、それが何かわからずに考え込む。
しかし戸口の方が急に騒がしくなって、考えを中断させられた。
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