《伯爵与妖精》卷二第三章牛奶糖与橘子3.3
女の子は、どうでもいい男からの豪華な花束よりも、好きな男が摘んでくれた道ばたの花の方がうれしいんだ。
そう言ったエドガーの言葉を思い出したのは、寝室の窓辺に飾ったマーガレットが目に入ったからだ。
ラングレー氏が、リディアをふつうの女性として扱ってくれるのは素直にうれしい。
エドガーが彼女をレディとして扱ってくれるのは……、なぜか素直に喜べない。
素直に喜ぶのは怖いような、いけないような気がしている。
距離を保っていないと、深みにはまってめちゃめちゃにされそうで。
その不実な感覚が何なのかわからないまま、ただリディアは怖れている。
明かりのともったテーブルで、ちっともページの進まない本を閉じたリディアは、別の一冊を取りだし、表紙を開いた。
押し花になった一輪のスミレをつまみ上げ、捨てようとし、花に罪はないのにと思い直す。
この花だけを持って帰ってきたのは、ただ単に好きな花だったから。深い意味なんてない。
薄い色合いがめずらしいと思っただけで、彼の瞳の色に似ているなんてこと、関係あるはずがない。
とにかく、エドガーの言葉なんかに惑わされてはいけないのだ。最初からわかっていたことだけれど、親切なのは自分にだけかもしれないと思いそうになっていたことを、リディアは心底後悔している。
「やっぱり、単なる女好きじゃないの」
そんなことで不機嫌になるのもしゃくだから、気持ちを落ち着けようと深呼吸した。
「おい、リディア」
あわてて本を閉じる。振り返ればニコが戸口に立っていた。てくてくと歩きながら、彼は部屋へと入ってくる。
「何あわててんだ?」
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