《伯爵与妖精》卷二第五章隔着玻璃的爱恋5.2
「はい」
「見えるのになぜ驚かない?」
「奇妙なものが見えることは、たまにありますから」
「ちょっと、あたしは奇妙なものじゃないわよ」
「よろしければエドガーさま、その中にあるものについてご説明しますが」
「なら教えてくれ。僕には小さなリディアに見えるが?」
「だいたい間違っていないと思います」
「だいたいって何よ! ふたりでコントはやめて!」
「リディア、いったいどうしてそんな姿になってしまったんだ?」
瓶を手に取ったエドガーは、興味|津々(しんしん)といった様子で、コルクのふたを取ろうとした。
「ああっ、だめよ! ふたを開けたらあたし死んでしまうわ!」
「えっ? どうして?」
「だってここには、あたしの身体(からだ)がないんだもの。グレアム卿が持っていったの。身体がないところで魂を離したら、魂は行き場がなくて消え失せちゃうのよ」
あわてて彼は、ふたから手を離す。
「ということは、きみの身体を取り戻して、この瓶の中にあるきみの魂を身体に戻さなければならないわけだ」
リディアは頷(うなず)く。
「エドガーさま、でしたら何よりも先に、手を打てることはしておいた方が」
「そうだな。レイヴン、ホテルへ戻ってグレアムを見張れ。じきに債権(さいけん)処理のことが奴の耳に入る。あの部屋にいるロザリーを見つければ、ドーリスとリディアのいる船に乗せようとするだろう。奴の人買い船がどれか、特定する」
「はい」
「ロザリー……、彼女はどうしたの? ねえ、まさか彼女に何かしたの?」
しかしエドガーは、リディアの声は無視して続ける。
「それからあらゆる手を使って、奴所有の船すべて、出航できないよう圧力をかけろ」
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