双语阅读:【日本经典小说连载】东京塔(117)
东京塔这部小说从“我”一点点长大,一直写到“我”目送着母亲因病去世,各种生活细节每每令人感同身受,因而赚取了读者大把的眼泪,也当之无愧地成了哭泣小说的首席代表。
Ⅳ(16)
人気の薄れた温泉街とはいえ、オカンの住んでいる筑豊の町に比べたら、遥(はる)かに都会である。駅の改札に駅員がいる。商店街が大きい。アーケードがある。
近鉄デパートにオカンを連れて行き、洋服やアクセサリーを買いなよと、ボクが手に取って勧(すす)めるのだけど、オカンはほとんど買い物をすることがなかった。それでもたまに、安売りのワゴンの中からハンドバッグを選んで買ったりすることがあって、その時、ボクはなんだかホッとしてうれしかった。
別府のアパートに来て、オカンは勘付いたらしく、こたつにいるボクの前に座って言った。
「あんた、煙草喫いよるやろ」
「うん……」。なんでバレたんだろうかと、顔をあげられないでいると、オカンは自分の煙草とライターをボクの目の前に差し出した。
「喫いさない」
「えっ……?」
「喫うていいけん、喫いさない」
「オレ、マイルドセブンやないんよ……」
どぎまぎして席を立ち、机の引き出しに隠したハイライトを出してきて、オカンの前で火をつけて喫った。オカンも煙草を喫いながらボクに話した。
「隠れてコソコソ喫いなさんな。隠れて喫ったら火事を出すばい。火は絶対に出したらいけん。人に迷惑がかかる。男やったら堂々と喫いなさい」
次の日。オカンは別府の商店街で、会社の重役室に置くようなカットガラスの大きな灰皿を買って来て、こたつの上にどかんと置いた。
三年になって学校の校舎移築に伴(ともな)い、ボクは別府市から大分市内の下宿に引っ越した。同じ越境入学をしているバカボンの紹介でその下宿に入り、今度の部屋は新築で風呂もトイレもあったけど、値段はまた二万円だった。別府のアパートの共同風呂は、大家(たいか)さんの家の風呂を使わせてもらうのだが、あの辺りの家はどこも自宅に温泉を引いてあるので毎日、温泉に浸かっていた。
時々、大家さんのおばさんがボクが入っている時に「お邪魔しますよぉ」といいながら無理矢理混浴してくることがあったのだけど、あれは、別府の混浴慣れした人の当たり前の行為なのか、あのおばさんがエロいのかわからない。同じアパートの女子に聞くと、女子の時は「はい、お邪魔しますよぉ」と言いながら、おじさんの方が入って来たらしい。今、冷静に考えてみれば好かんたらしいアパートだったのである。
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