双语阅读:【日本经典小说连载】东京塔(140)
东京塔这部小说从“我”一点点长大,一直写到“我”目送着母亲因病去世,各种生活细节每每令人感同身受,因而赚取了读者大把的眼泪,也当之无愧地成了哭泣小说的首席代表。
Ⅴ(10)
意識朦朧としながら眠ってしまい、次の日の昼に目が醒めた時には、頭にタオルがのっていて、オカンはベッドの横に居た。六歳の時、赤痢にかかって一緒に隔離された、あの時と同じように、当たり前のように隣に居た。
「いつ、来たん……」
「朝一番の新幹線で来たんよ……」
炊事場でオカンがリンゴを摩り下ろしている音がする。その音を聞きながら、安心が身体中に、ぎゅうっと染み込んできて、ゆっくり眠れた。
次の日になって、熱はだいぶ下ったけどボクはまだ、寝たままだった。うとうとしながら昼過ぎに目が醒めたときには、パチパチと聞き慣れた音がする。
横を見ると、オカンが横浜のさなえおばちゃんと花札をしているのである。さなえさんは元々、九州人でオカンの古い友人だが今は横浜の娘さんの家に住んでいる。自称・花札大学首席卒業。オカンが来ているということで、早速、お花のお稽古にいらしたらしい。博打と下ネタは、ボクも小さい時からさなえさんに厳しく指導されてきた。
「マーくん。あんた四〇度近く出たそうやないね。金玉が溶けとらんか、触(さわ)ってみんじゃい」
それからボクはまたしばらく、子供の頃、子守(こもり)唄のように聞いていた、札の打ち合う音を耳にしながら眠った。
寝ている間に、友達や彼女が見舞いに来たらしいが、ドアを開けるとベッドの横でオバハンが花札を打っていたので、みんなビビッてすぐに帰ったらしい。その翌日にやって来た友達は、教え込まれて一緒に打たされていた。そのせいで、その後しばらく大学で花札が流行したのだった。
ダンサーを目指して上京したバカボンは一度もダンスを踊らないまま、九州に帰って行った。こうやって、なにかを志(こころざ)して上京し、なんにもならずに帰って行く友を何人見てきたことか。でも、それは彼らがなまけていたからではない。ただ、それはちょっとしたキッカケだ。どんなにも頑張っても始まらないことがある。始まった途端に終わることもある。どんなに才能があっても、光が当たらないこともある。
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