双语阅读:【日本经典小说连载】东京塔(201)
东京塔这部小说从“我”一点点长大,一直写到“我”目送着母亲因病去世,各种生活细节每每令人感同身受,因而赚取了读者大把的眼泪,也当之无愧地成了哭泣小说的首席代表。
「この曲は、ようオトンが歌いよったねぇ……」
「へー、そうなん?知らんかった」
オトンとカラオケなど行ったことがない。もちろん、この曲を歌っているところも見たことはない。ほとんど生活を共にしたこともないのに、DNAはカラオケの趣味まで遺伝させるのだろうか?
しかし、オトンはなにをしているのだろうか?オカンが東京に来たばかりの頃、家に電話があって話したきり、ボクはちゃんと話してもない。
「おう、どうか?調子は?」
「まぁまぁ」
「そうか。なら、ええやないか。まぁ、東京の方はなんぼか仕事もあるやろう。もう、小倉なんかは景気は悪いでからどうしようもないけんのぉ」
ここまでの会話は、いつ話してもオトンは同じことを言う。
「お母さんのこと、よろしくたのむぞ」
「うん」
「そしたらの」
まるで、ひとごとなのである。
それでも、オカンはたまに連絡を取っているようだったが、ボクからオカンに電話することはない。なぜなら、ボクはオトンの電話番号を知らないからだ。
声帯の手術をオカンが決心してから何日くらい経った頃だろうか、一本の朗報が我が家に届いた。
なんでも、最近フランス留学から戻ってきたばかりの甲状腺専門医がいるらしい。その人は、オカンのようなケースを何度も経験した腕のいい医師だという。一度、その先生に診てもらってはどうかと、担当医が紹介状を書いてくれたのである。元来、オカンの通っていた病院は外科手術は専門外らしく、たまたま、いいタイミングで帰国したというT先生を紹介してくれたのである。
東京タワーのふもとにいる総合病院。正面玄関から東京タワーが絵葉書のようにまっすぐ見える。
T先生は想像と違い、まだ四十年前ではないかと思われる若さだったが、口髭(くちひげ)をたくわえたその表情は自信に溢れていた。
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